年末年始に観たいクラシック無料動画特集

 海外オケの来日ラッシュなど、何かと話題の多かった2023年のクラシック音楽界。この年末年始は自宅でゆっくり、という皆さんのために、ぶらあぼ編集部セレクトで無料で観られる最新オススメ動画の情報をまとめました。
(配信期間は変更になる場合がありますのでご注意ください)

アンサンブル・アンテルコンタンポラン&パトリツィア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン)

Ensemble Intercontemporain & Patricia Kopatchinskaja
Quaerendo Invenietis by Bach

ピエール・ブリューズ(指揮)とともに2024年春に来日が予定されているフランス現代音楽界の雄アンサンブル・アンテルコンタンポランとコパチンスカヤの共演。シャリーノ、クラム、ウェーベルンといった作曲家の作品のあいだにバッハの音楽が挿まれていくプログラム構成。超絶美しいバッハのカンタータ第106番の冒頭ソナティーナのクルターグによる4手連弾トランスクリプション(9’50”〜)に浸っていると、そこからジョージ・クラムのBlack Angelsが静謐な空気を切り裂く。この両者の顔合わせで何も起こらないはずはないが、その後の展開は見てのお楽しみ。11月25日、パリ シテ・ド・ラ・ミュジークでの収録。(配信期間:2024.11/25まで)

クラウス・マケラ(指揮)パリ管&アレクサンドル・カントロフ(ピアノ)

Klaus Mäkelä & Orchestre de Paris / Alexandre Kantorow

Maurice Ravel: Shéhérazade – Ouverture de féérie
Camille Saint-Saëns: Concerto pour piano n° 5 « Égyptien »
(Encore | Mompou: Canción y Dnaza No.6 / Liszt: Sonetto 104 del Petrarca)
John Dowland: Lachrimae Antiquae
Robert Schumann: Symphonie n° 2

2022年の来日が記憶に新しいクラウス・マケラ&パリ管公演の11月の公演から。サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」を弾くのは、日本でも人気急上昇のアレクサンドル・カントロフ。第2楽章の異国情緒はもちろん、繊細なフレージング、弾けるような爽やかさ全開。アンコールで弾いたモンポウとリストも絶品。
後半は、少人数の弦楽アンサンブルによるダウランドのラクリメからシューマンの交響曲第2番冒頭の序奏へとそのままつなげる。マケラのしなやかで軽快な指揮っぷりとオケ(コンサートマスター:千々岩英一)の反応の良さが両者の絆を感じさせる。(配信期間:2024.5/15まで)

ロデリック・ウィリアムズ(バリトン) イアン・バーンサイド(ピアノ)

Roderick Williams baritone; Iain Burnside piano – Live from Wigmore Hall

ロデリック・ウィリアムズのロンドン・ウィグモアホールでのリサイタル。歌曲のスペシャリストであるウィリアムズらしく、クィルター、M.ボニス、フォーレ、A.マーラー、R.クラーク、ラフマニノフ、ドビュッシーと、レパートリーの幅広さには特筆すべきものがある。フランス歌曲もドイツリートも得意な彼だが、やっぱりおすすめはロジャー・クィルター。
ウィグモアホールのライブでは、9月のアスミク・グリゴリアン(ソプラノ)ルーカス・ゲニューシャス(ピアノ)によるチャイコフスキー、ラフマニノフの歌曲もおすすめ。

クシシュトフ・ウルバンスキ(指揮)バイエルン放送響&エフゲニー・キーシン(ピアノ)

BR-SYMPHONIEORCHESTER MIT KRZYSZTOF URBAŃSKI UND EVGENY KISSIN

Sergei Rachmaninov: Piano Concerto No.3 in D minor, op.30
(Encore | Chopin: Waltz in D-flat major op.64-1 /  Mazurka in F minor op.63-2 / Brahms: Waltz in A-flat major op.39-15 / Chopin: Mazurka in C-sharp minor op.50-3)
Dmitri Shostakovich: Symphony No. 10 in E minor, op.93

11月3日、クシシュトフ・ウルバンスキのBRSO初登場となったガスタイク(ミュンヘン)イザール・フィルハーモニーでの演奏会。キーシンのラフマニノフ3番は、かなりゆったりとしたテンポでスタートする。ヴィルトゥオジティを前面に出すというよりは、カンタービレを重視し、繊細に弾き進んでいく。アンコールは4曲も! ショスタコーヴィチでは、疾走感あふれるエネルギッシュな第2楽章はじめ、起伏のあるドラマを緻密に構築していくウルバンスキの明晰なタクトが、現地でも大評判だった様子。また呼ばれそうな予感!

グスターボ・ドゥダメルのロサンゼルス・フィル 「火の鳥」リハーサル

Gustavo Dudamel rehearses “The Firebird” suite with the Los Angeles Philharmonic

見て楽しい(?)指揮者のひとり、ドゥダメルによるLAフィルの「火の鳥」リハ。10月4日、ウォルト・ディズニー・コンサート・ホールでの収録。

ピアソラ:ブエノス・アイレスのマリア ジュネーヴ大劇場

Astor Piazzolla’s Maria de Buenos Aires – Grand Théâtre de Genève

Facundo Agudin, Music Director
Melissa Vettore & Beatrix Sayard (v)
Raquel Camarinha (María)
Inés Cuello (La voz de un payador)
Acrobates et acteurs de la Compagnia Finzi Pasca

アストル・ピアソラ唯一のオペラ(オペリータ)。代表作ながら、実演に接するチャンスは少ないが、2023年は国内でも複数の上演機会に恵まれた。ジュネーヴで上演されたステージからは、ブエノスアイレスの街角とそこに生きる人々の空気感のようなものが伝わってくる。ファクンド・アグディン(指揮) ダニエル・フィンジ・パスカ(演出)ジュネーヴ高等音楽院オーケストラ、ラケル・カマリーナ(ソプラノ)他の演奏。(配信期間:2024.6/3まで)

アウグスティン・ハーデリヒ(ヴァイオリン)クァルテット・インテグラ エリオット・ウー(ピアノ)

Augustin Hadelich plays Chausson Poème (Live 2023)

Augustin Hadelich, violin
Elliott Wuu, piano
Quartet Integra (Kyoka Misawa, Rintaro Kikuno, violins; Itsuki Yamamoto, viola; Anri Tsukiji, cello)

Ernest Chausson: Poème Op. 25 Version for violin, string quartet and piano

2024年2月に16年ぶりの来日リサイタルが予定されているハーデリヒと、ロサンゼルスのコルバーン・スクールにレジデンスアーティストとして在籍する日本のクァルテット・インテグラ(三澤響果、菊野凛太郎、山本一輝、築地杏里)の共演によるショーソンの「詩曲」。8月にカリフォルニア州でおこなわれたLa Jolla Music Society SummerFest 2023から。クァルテットが奏でる仄暗い音色に始まり、やがてハーデリヒのソロが入ってくる。冒頭から引き込まれること必至!

バラケ・シソコ(コラ) ヴァンサン・セガール(チェロ)ヴァンサン・ペラニ(アコーディオン)エミール・パリジャン(サックス)

Sissoko, Segal, Parisien & Peirani – Journeys Through Music

最後は変わり種を。西アフリカの伝統的な撥弦楽器コラの第一人者で、マリ出身のバラケ・シソコと、ジャンルを超えた活動で知られるチェロの鬼才ヴァンサン・セガールほかのステージ。1回ハマるとクセになるコラの独特な音色と自在な即興プレイは圧巻のひとこと。ワールドミュージック系アーティストの出演も多いパリのキャバレー・ソヴァージュでのライブから。理屈抜きで、まずはそのサウンドを体感しよう!(配信期間:2024.11/24まで)