情熱と冷静さが交錯するフランクに魅かれて
ソリストとして、また水戸室内管弦楽団のメンバーとしても活躍を続けるチェリストの宮田大。12月には東京、名古屋、大阪などでリサイタルを開く。
「この春に第2弾となるCDを録音しました。そのリリース記念という意味もありますが、久しぶりにまとまった数のリサイタルを日本で開催できますね」
リサイタルの曲目は、イタリアのバロック期の巨匠マルチェッロに始まり、ベートーヴェン、そしてフランクのソナタ(一部会場ではショスタコーヴィチ)というラインナップだ。
「水戸室内管弦楽団に客演したオーボエ奏者の方が、アンコールにマルチェッロを演奏された時に、こんなに美しいメロディがあるんだと驚きました。バッハもこの作品を編曲しているのですが、こちらはちょっとメロディの装飾が多い版になっていて、今回はその版をチェロで演奏します」
ベートーヴェンはチェリストにとって必須の作品だ。
「その中で第4番は比較的短い作品ですが、第1楽章、第2楽章ともゆったりとした部分から始まり、そこから次第にベートーヴェンらしい力強い世界に入って行くという構成になっています。そこがフランクのソナタの雰囲気に合うかな、と思っています」
後半に置かれたフランクのソナタは、言うまでもなくベルギー出身のこの作曲家の代表作(原曲はヴァイオリン・ソナタ)。
「情熱的な部分と冷静な部分が交錯するようなイメージですね。第1楽章の冒頭も、ピアノの作り出す温かみのあるロマンティックな和音の上に、チェロがちょっと冷静な音で登場します。とても魅力的な作品ですし、ピアノのジュリアン・ジェルネがやはりベルギー出身で、彼らしい同郷の作曲家への想いもあって、演奏するのがとても楽しみです」
2011年の『Dai First』以来、3年ぶりとなる新録音『宮田大/チェロ一會集(いちえしゅう)〜Rencontre~』は、そのフランクを中心にフランスものを取り上げた。
「プロデューサーの西脇義訓さん(N&Fレーベル)はホールの音響を大事にされる方なのですが、ホールの豊かな響きが感じられるような、広がりのある世界を作ってくれました」(CDは12月発売予定)
宮田は2013年6月にドイツのクロンベルク・アカデミーを修了し、今は日本とヨーロッパで演奏活動を続けている。この秋には仙台フィル(10/24,10/25)、関西フィル(11/15,11/18)、読響(11/22,11/24)とオーケストラとの共演も多い。また来年1月には京都市交響楽団とグルダの「チェロとブラス・オーケストラのための協奏曲」を演奏する。新鋭チェリストの活躍から目が離せない秋になりそうだ。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
12/2(火)19:00 ヤマハホール 問:イチマルマルニ03-3264-0244
12/5(金)19:00 よみうり大手町ホール 問:読売新聞ホール企画部03-6739-5838
12/8(月)19:00 ザ・シンフォニーホール 問:otonowa075-252-8255
12/11(木)19:00 日立システムズホール仙台 問:仙台・杜の響きコンサート022-302-3344
12/16(火)19:00 松本 ザ・ハーモニーホール 問:松本実行委員会070-1417-3838
12/17(水)18:45 三井住友海上しらかわホール 問:クラシック名古屋052-678-5310