楽器を超えた温かくも深い対話
達者なフルーティストは何人もいる。しかし、温もりのある“音楽”を聴かせる奏者は多くない。瀬尾和紀はその稀少な一人だ。この12月にヤマハホールでピアノのパク・ジョンファとデュオ・リサイタルを行う瀬尾は、パリ音楽院で学び、ランパル、ジュネーヴ等の国際コンクールで入賞。以来欧米各地でのリサイタルや内外主要楽団との共演を続け、CDも多数録音している。パクは、ブゾーニ、エリザベート等の国際コンクールで入賞後、やはり欧米でのリサイタルやボストン響等との共演を行っている韓国の名手。共に破格の技巧の誇示よりも、作品の内面の追求を重んじる点が、本共演のゆえんだ。バッハに始まる大作曲家の名品揃いの演目も“音楽勝負”の証し。特にプロコフィエフのフルート・ソナタ、フランクのヴァイオリン・ソナタのフルート版は、ハイクオリティな曲ゆえに期待が大きい。さらにピアノ独奏がベートーヴェンのソナタ等の本格作である点も、通常の管楽器公演とは違った妙味。稀有の“音楽家たち”が紡ぐ充実の音楽を満喫したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年11月号から)
12/3(水)19:00 ヤマハホール
問:永澤学事務所072-781-8087