城戸かれん(ヴァイオリン)

特別な思いを胸に臨む名人たちとの室内楽

(c)Junichiro Matsuo

 近年充実の度を深める俊才ヴァイオリニスト、城戸かれんが、今秋3回目を迎える「ローム ミュージック フェスティバル in TOKYO」に出演する。東京藝術大学を首席で卒業後、同大学院在籍時に「ローム ミュージック ファンデーション」2018・19年度奨学生に選ばれた城戸は、1991年以来若手音楽家を支援してきた同ファンデーション自体が憧れの対象だったと語る。

 「多くの大先輩方がロームの奨学生になっていて、以前からぜひ応募したいと考えていました。ご支援いただいた奨学金は、大学院での勉強、国際コンクール参加の渡航費、学校以外でのレッスン、自主公演などに使わせていただきました」

 ローム奨学生として多くの経験を得たことで「可能性が広がった」と振り返る。

 「自分のスタイルや強みは何かと悩む中で、それを探すための選択肢が増えました。コンクールでは自分の表現が磨かれますし、留学はしませんでしたが、国内外でのマスタークラスを数多く受けられて、すばらしい先生方にも出会えました」

 10月のフェスティバル公演は、ローム奨学生経験者の候補の中からヴァイオリンの名匠・玉井菜採の推薦で、城戸のほか、ヴィオラの金丸葉子(コンセルトヘボウ管)、チェロの中木健二、ピアノの浜野与志男という名人たちが集う。曲目は、玉井と浜野がシューマン「3つのロマンス」、城戸と浜野が合作「F.A.E.ソナタ」からポピュラーな第3楽章(ブラームス)とレアな第4楽章(シューマン)を担当。他はドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」とブラームスのピアノ五重奏曲という室内楽の名作が並ぶ。

 「『F.A.E.』はいつか弾いてみたかった作品ですし、四重奏、五重奏は大好きな第2ヴァイオリンで、先生方に挟まれながら弾けるのは大きな喜びです。名曲ぞろいのプログラムも、この5人で新たな魅力を表現できるんじゃないかと思っています」

 さらに、玉井との室内楽での初共演となるこの舞台に、特別な思いがあるという。

 「2020年の大学院修了試験の場で、それまで関わりがあまりなかった玉井先生から厳しいご指摘をいただきました。その直後のコロナ禍で活動が止まった時期に、そこで言われた意味をよく考えて作曲家のことから学び直し、試す時間が取れたことで、自分の音楽が変わった実感があります。人生の中でも特別に重要な期間になりました」

 その後、城戸は玉井がリーダーを務める紀尾井ホール室内管のメンバーに選ばれ、ソロや室内楽での活躍も際立っている。恩人と向き合える本公演、「共演がものすごく楽しみです!」との言葉にひときわ強い気持ちがこもる。
取材・文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年10月号より)

【出演者変更】
※ヴィオラの金丸葉子は都合により出演できなくなり、田原綾子に変更となりました。

ローム ミュージック フェスティバル2023 in TOKYO
ブラームス、そしてその楽友たち〜シューマンとドヴォルザーク【配信あり】
2023.10/14(土)16:00 紀尾井ホール
問:1002(イチマルマルニ)03-3264-0244
https://micro.rohm.com/jp/rmf/activity/rmfes/2023_inTOKYO/