各国の音楽文化の現在地を示す3日間
毎年10月に開催される「アジア オーケストラ ウィーク」(AOW)は、日本にいながらアジア各国のオーケストラを聴くことができる貴重な機会。
プログラムは「自国のオーケストラ曲」「その地域で最も注目されているソリストとの協奏曲」「勝負をかける交響曲(管弦楽曲)」の三本柱で構成される。
今年は日本から千葉交響楽団、トルコからイスタンブール国立交響楽団、そして韓国から韓国チェンバー・オーケストラの3団体が参加、各国の代表として10月5日、6日、7日の3日間、東京オペラシティで熱演を繰り広げる。
1985年創立の千葉交響楽団は、AOW初登場。千葉県唯一のプロ・オーケストラとして地元から「おらがまちのオーケストラ」と親しまれ、愛されている。2016年4月には音楽監督に山下一史を迎え、新たな挑戦に取り組んでいる。
プログラムでは、團伊玖磨の管弦楽組曲「シルクロード」に注目。「綺想的前奏曲」「牧歌」「舞踏」「行進」の4曲から成り、シルクロード上の国々の音階などが用いられている。関連で、ボロディンの交響詩「中央アジアの草原にて」も。ムソルグスキー(ラヴェル編)の組曲「展覧会の絵」は定評のある千葉響の弦・木管・金管の名演に期待したい。
イスタンブール国立交響楽団のルーツは1827年に設立された「オスマン帝国オーケストラ」にまで遡る。AOWには20年ぶりの登場。指揮のギュレル・アイカルはボルサン・イスタンブール・フィル名誉指揮者。ソリストのチハト・アスキンはトルコを代表するヴァイオリニスト。トルコの伝統音楽とクラシック音楽を融合、発展させた作曲家ウルヴィ・ジェマル・エルキン(1906〜72)の雄大なヴァイオリン協奏曲は必聴。他に芥川也寸志「弦楽のための三楽章(トリプティーク)」とチャイコフスキーの交響曲第4番が演奏される。
初登場の韓国チェンバー・オーケストラ(KCO)は1965年創立の韓国を代表する室内管弦楽団。2015年に創立50周年の世界ツアーを行った。KBS響コンサートマスター、韓国国立響の音楽監督などを歴任したキム・ミンが音楽監督・コンサートマスターとしてKCOを率いる。ソリストのユン・ソヨンはメニューイン、ヴィエニャフスキなどの国際コンクールで優勝、ピアソラ「ブエノスアイレスの四季」はKCOとの録音もあるヴァイオリニスト。ユン・イサン「弦楽のためのタピ」は8分ほどと短いが、緊張感が充満する作品。他にシューベルトの序曲とドヴォルザークの弦楽セレナーデを演奏。
未知の作曲家や作品、初めて聴くオーケストラ、アーティストとの遭遇は、驚きと発見に満ちた刺激的な体験になることだろう。アジア独自の文化や伝統を背景に持つ、個性豊かなオーケストラの祭典にぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2023年10月号より)
2023.10/5(木)19:00 千葉交響楽団
10/6(金)19:00 イスタンブール国立交響楽団
10/7(土)15:00 韓国チェンバー・オーケストラ
東京オペラシティ コンサートホール
問:日本オーケストラ連盟03-5610-7275
https://www.orchestra.or.jp/aow2023/