ダニエル・ライスキン(スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者)

ウィーン流儀の優雅さとスラヴの民族性の理想的な結合

 スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団が7月、首席指揮者のロシア人、ダニエル・ライスキンと、前首席客演指揮者のチェコ人、レオシュ・スワロフスキーとともに来日する。「聴衆やホールの素晴らしさだけでなく、庭園や寺などの美意識、食べ物まで日本の全部が好き」というライスキン。アムステルダムの自宅と結び、インタビューを試みた。

——スロヴァキア・フィルとの出会い、オーケストラの特色を教えてください。

 2009/10シーズンにベートーヴェン、チャイコフスキーというコアな曲目で初共演して協力関係を積み重ね、友情から“結婚”へと発展しました。深い信頼関係で結ばれ、私はこの楽団と働くのが大好きです。120人の優秀な音楽家、音響の素晴らしいホール、欧州屈指の実力を持つ合唱団に恵まれ、J.S.バッハから現代の新作まで350年のレパートリーに対応しています。
 第1の柱はもちろん、スメタナからDNAを受け継いだドヴォルザーク、ヤナーチェクに至るチェコと、ツィケル、スホニュ、ベラらスロヴァキアの作曲家です。次いでチャイコフスキー、ショスタコーヴィチなどロシアの音楽。そして、ドナウ川の対岸に位置するウィーンとの地理的な近さを反映したマーラー、ブルックナーといったオーストリアの作曲家にも強みを発揮します。オーケストラの音色はウィーン流儀の貴族的な優雅さ、西ヨーロッパへの接近とスロヴァキアの民族音楽、スラヴの心が一体になった理想の配合です。管楽器も西の柔らかさ、スラヴの強さを兼ね備えています。

——日本ツアーのメインはドヴォルザークです。

 私は元々ヴィオラ奏者で、ドヴォルザークの室内楽曲を数多く弾いてきました。堤剛さんとご一緒したこともあります。スメタナやドヴォルザークの尽きることのないメロディーは天才的であり、人間の魂を直撃するので、いささかセンチメンタルな私にはぴったりです。しかもドヴォルザークはベートーヴェン、マーラーと同じく「第9番」までの交響曲を残したシンフォニスト。指揮者としての私の、重要なレパートリーにもなっています。

——その「チェロ協奏曲」では日本の若手、笹沼樹さんと共演されますね。

 ヴァイオリンだけ挙げてもMIDORI(五嶋みどり)、諏訪内晶子、樫本大進…と数多くの日本人ソリストと共演しています。ドイツのライン州立フィルの首席指揮者を12年間務めた当時のコンサートマスターも、日本人でした。皆さん非常に勤勉、卓越した美意識の持ち主で「素晴らしい」の一言です。笹沼さんとは初共演で、ブラチスラヴァで演奏後、日本に向かうのをすごく楽しみにしています。
取材・文:池田卓夫
(ぶらあぼ2023年3月号より)

ダニエル・ライスキン(指揮) スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団
横浜公演
 
2023.7/5(水)19:00 横浜みなとみらいホール
第19回イマジン七夕コンサート 
7/6(木)19:00 サントリーホール
秋田公演 
7/8(土)15:00 あきた芸術劇場ミルハス
問:コンサートイマジン03-3235-3777 
http://www.concert.co.jp
※日本ツアーではレオシュ・スワロフスキー指揮のプログラムも予定。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。