調布国際音楽祭2023の聴きどころ

One Melody for All 〜誰もが楽しめる音楽の祭典を目指して

 2013年にスタートして以来、自身も地元で育ったというエグゼクティブ・プロデューサーの鈴木優人さんを中心に、バッハ・コレギウム・ジャパンや第一線のアーティストたちが登場してきたフェスティバル。調布市グリーンホールと文化会館たづくりをメイン会場に、市民ボランティアも多数参加する初夏の街の風物詩として親しまれています。6月24日〜7月2日の9日間、調布の街が音楽であふれます!
2022年 バッハ・コレギウム・ジャパンの公演より ©︎K.Miura

文:片桐卓也

 江戸時代に内藤新宿から現在の調布付近へ行くには、やはり甲州街道を使い、下高井戸宿、国領宿などを経由して、栄えていたと言われる布多天神社を目指すという行程を歩いたのだろうな…と京王線特急電車に揺られながら想ったりする。当時は片道でおそらく半日を費やした(?)であろう行程も、いまは特急を使えばわずか15, 6分である。

 調布国際音楽祭(CIMF)は、今年で11回目の開催を迎える。ここ数年のコロナ禍を経て、今年はようやく以前のようなスタイルで開催することができるようになったので、再び賑わいのある雰囲気が戻り、楽しげな会話が会場で交わされる音楽祭となるだろう。
 興味深いコンサートも多いが、ビジュアル面でも、また運営面でも様々な工夫をこらすこの音楽祭。2023年のテーマは「One Melody for All」であり、そのテーマの発展のさせ方はとてもバラエティに溢れている。代表的なコンサートを紹介したい。

♪スペシャルガラコンサートには、あの有名ピアニストが参加

 6月25日の「オープニング・コンサート」には、読売日本交響楽団が登場。市内に映画の大型撮影所が点在している「映画のまち調布」らしく、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番など、名作映画に因んだ作品が鈴木優人のタクトでとりあげられる。ソリストは、2018年浜松国際ピアノコンクールの覇者で、日本でも人気のジャン・チャクムル。愉悦感ある音色で繊細なモーツァルトを聴かせてくれそうだ(6/25)。

鈴木優人(エグゼクティブ・プロデューサー) ©︎K.Miura
ジャン・チャクムル

 今年のテーマをそのまま掲げた「調布国際音楽祭スペシャルガラコンサート One Melody for All」には特別ゲストとして清塚信也(ピアノ)が登場。廣津留すみれ(ヴァイオリン)、髙木慶太(チェロ)、森下唯(ピアノ、当音楽祭アソシエイト・プロデューサー)も参加し、手話で「手歌」を披露するホワイトハンドコーラスNIPPON、さらにはさとうたけし(ライブペインティング)のパフォーマンスも加わって、この音楽祭のエグゼクティブ・プロデューサーである鈴木優人がナビゲートする。曲目など詳細はまた後日発表される予定だが、現在、世界のアートの潮流ともなっている“ダイバーシティ”を体現するコンサートになりそうだ(6/30)。

清塚信也 ©︎Yuji Takeuchi
ホワイトハンドコーラスNIPPON

 フィナーレを飾る「フェスティバル・オーケストラ」の公演では、ベートーヴェンの「第九」を取り上げる。指揮は鈴木雅明で、声楽陣はいまの日本を代表する実力派4人が揃った。フェスティバル・オーケストラはアカデミー的要素をもち、オーディションで選ばれた若い演奏家が各楽団で活躍する一線級の先輩演奏家たちの教えを受けながら、一緒に演奏会に向けてリハーサルを重ねていく。また、合唱団メンバーも公募するという。言うまでもないことだが、ベートーヴェン自身も難聴など自分自身の抱える病に苦しめられ、またナポレオン戦争の真っ只中という動乱の時代を生きた作曲家である。その彼が最後の交響曲に残した「歓喜の歌」のメロディは、およそ200年という時間を超えて、今もなお我々の希望の歌ともなっている。鈴木雅明の指揮のもと、若い力とベテランたちの想いが交錯する演奏となる予感がする。上野星矢(フルート)がソリストを務めるバッハの管弦楽組曲第2番にも期待(7/2)。

鈴木雅明&フェスティバル・オーケストラ ©︎K.Miura

♪新しい音楽の時代、次の音楽の時代を考えたプログラミング

 金子仁美、細川俊夫、藤倉大という作曲家たちが鈴木優人とともに講師をつとめる、6月24日の「ワークショップ『新しい音楽を作る』Vol.2」は昨年に続き実施される企画。公募で集まった作品を第一線の演奏家たちが実際に音にするなかで、実りあるディスカッションを重ね、作曲家を目指す若者たちを叱咤激励するという興味深い試みだ。

金子仁美 ©︎Daniel Campbell
細川俊夫 ©︎Kaz Ishikawa
藤倉大 ©︎Yuko Moriyama otocoto

 「次世代への継承」を理念に掲げるだけあって、若い世代の音楽家の演奏の場を提供するだけでなく、子どもたちを音楽の世界に誘い込んでくれそうな企画がたくさんあるのも、この調布国際音楽祭の魅力。桐朋学園大学打楽器専攻の学生たちによる恒例の「たたいてあそぼう」(7/2)のほか、「音楽室の楽器、こんなにかっこイイ!」には鍵盤ハーモニカ、リコーダー、ピアノの編成で活動する人気の「おんがくしつトリオ」が出演する(7/1)。ホールのエントランスで行われる「オープンステージ」や、せんがわ劇場で行われる「ランチタイム・ミニリサイタル」など気軽に聴けるイベントも期間中様々な会場で予定されている。

 この音楽祭のレジデント・オーケストラでもあるバッハ・コレギウム・ジャパンはヴィヴァルディの「四季」を2日間にわたって演奏するが、ヨーロッパで大活躍中の佐藤俊介(ヴァイオリン)が9年ぶりに参加するのも注目(7/1, 7/2)。バッハの管弦楽組曲、チェンバロ協奏曲なども演奏されるが、比較的規模の小さなくすのきホールでこのメンバーによる演奏を聴くのはかなり贅沢な体験となりそうだ。

バッハ・コレギウム・ジャパンの昨年の公演より ©︎K.Miura
佐藤俊介 ©︎Marco Borggreve

♪調布らしい、由緒正しき会場でのコンサート

 由緒ある布多天神社神楽殿でふたりのプロデューサー鈴木&森下によるベヒシュタイン・ピアノの演奏を無料で楽しめる公演(6/27)、恒例の深大寺本堂でのコンサート(6/29)など会場も魅力的。深大寺では、櫻田亮(テノール)、懸田貴嗣(バロックチェロ)、西山まりえ(チェンバロ)と、古楽の第一人者たちが出演する。調布という街のいにしえからの歴史に思いを馳せつつ楽しみたい。さらには日本の若手ソリスト3人、松田華音(ピアノ)、川久保賜紀(ヴァイオリン)、佐藤晴真(チェロ)によるチャイコフスキー「偉大な芸術家の思い出に」も聴き逃せない。

布多天神社神楽殿でのコンサート ©︎K. Miura
上段左より)松田華音 ©︎Ayako Yamamoto/川久保賜紀 ©︎Yuji Hori/佐藤晴真 ©︎TOMOKO HIDAKI
下段左より)櫻田亮 ©︎Ribaltaluce/西山まりえ ©︎Naoya Yamaguchi/懸田貴嗣 ©︎K.Miura

 また、「次世代への継承」を理念の一つとして掲げる調布国際音楽祭では、「ジュニア招待」と「国際交流」の二つのプログラムの支援を募集している。支援のお礼として、対象公演の良席のチケットを提供する。こちらは3月30日が締め切りとなっているので、気になる方は急いでチェックしてほしい。

 音楽だけでなく、毎年楽しみにしている方も多いのが、木版画家・沙羅によるキービジュアル「調布の森のどうぶつたち」で、関連グッズも充実。今年はどんなどうぶつが新たに加わるのか、音楽祭の中で発見しよう!

調布国際音楽祭2023
2023.6/24(土)〜7/2(日) 調布市グリーンホール、調布市文化会館たづくり、調布市せんがわ劇場、深大寺本堂 ほか
主催:公益財団法人調布市文化・コミュニティ振興財団、調布市

主なスケジュール
◎ワークショップ「新しい音楽をつくる」Vol.2
6/24(土)16:00 せんがわ劇場
◎オープニング・コンサート ~鈴木優人 × 読響 銀幕を彩る名曲たち
6/25(日)14:00 調布市グリーンホール 大ホール
◎ランチタイム・ミニリサイタル in せんがわ劇場
6/26(月)、27(火)28(水)12:00 せんがわ劇場
◎ベヒシュタイン・ジャパン presents 布多天神社できくグランドピアノVol.2
6/27(火)16:30 布多天神社 神楽殿
◎深大寺で聴く古のうた
6/28(水)12:00 / 15:30 深大寺 本堂
◎川久保賜紀×佐藤晴真×松田華音 チャイコフスキー《偉大な芸術家の思い出に》
6/29(木)14:00 調布市グリーンホール 大ホール
◎調布国際音楽祭スペシャルガラコンサート One Melody for All
6/30(金)14:00 調布市グリーンホール 大ホール
◎音楽室の楽器、こんなにカッコイイ!~おんがくしつトリオ
7/1(土)11:00 / 14:00 文化会館たづくり むらさきホール
◎バッハ・コレギウム・ジャパン ヴィヴァルディ《四季》~春と夏~
7/1(土)17:00 文化会館たづくり くすのきホール
◎バッハ・コレギウム・ジャパン ヴィヴァルディ《四季》~秋と冬~
7/2(日)11:00 文化会館たづくり くすのきホール
◎たたいてあそぼう2023
7/2(日)11:00 / 14:00 文化会館たづくり むらさきホール
◎フェスティバル・オーケストラ ベートーヴェン「第九」
7/2(日)15:00 調布市グリーンホール 大ホール

チケット発売 
ちょうふアートプラス会員:4/6(木) 
一般:4/13(木)
問:チケットCHOFU 042-481-7222 (初日はインターネットのみ)

〈寄附付きチケット(税制上の優遇の対象)〉
費用
 10,000円(寄附)+各公演チケット料金
提供チケット数 1口あたり1枚
募集数 各公演10口(申込先着順) 締切:3/30(木)
※寄附のみ(1口1,000円~)も受付けています
対象公演・詳細
https://donation.chofu-culture-community.org/collections/mfes-2023-support


〈CIMFスポンサーシート(税制上の優遇の対象外)
費用
 100,000円(1口)
提供チケット数 1口あたり6枚(1公演2枚まで)
募集数 10口(申込先着順) 締切:3/30(木)
対象公演・詳細
https://www.chofu-culture-community.org/events/archives/9468