響き合う東西の交響的宇宙
山田和樹が2023年4月からバーミンガム市交響楽団の首席指揮者兼アーティスティックアドバイザーに就任する。スイス・ロマンド管とバーミンガム市響の首席客演指揮者、モンテカルロ・フィルの芸術監督等を歴任してきた彼は、ラトルやネルソンスがシェフを務めたこの英国の名門楽団を率いることで、“世界のヤマカズ”への歩みをなお一層進めることになる。となれば日本での活動はますます貴重だ。
そこでこの1月、首席客演指揮者を務める読売日本交響楽団で聴かせる重量級のプログラムが注目される。なかでも、黛敏郎の「曼荼羅交響曲」とマーラーの交響曲第6番「悲劇的」の組み合わせはエキサイティングだ。前者は、1960年に初演されて衝撃を与えた黛の代表作のひとつ。複数の菩薩が集まる曼荼羅図を、「春の祭典」風のリズムやメシアン等を彷彿させるカラフルなサウンドを用いて音楽化した、ユニークな交響曲である。後者は、混沌と感動が同居した斬新かつ緊迫感の高い大作。カウベルが響き、ハンマーが打ち鳴らされる音楽は、耳目に刺激を与えてくれる。
複雑にして密度の濃い両曲を、スコアの読みに長けた山田と色彩感豊かな読響がいかに表現するか? それがまず注目点となる。邦人作品を多く手がけ、2015〜17年日本フィルとのマーラー・ツィクルス等でも成功を収めた山田による“交響曲の究極点の描き分け”への期待も十分。2曲が続いた際に生まれる新感触もまた興味深い。そして何より打楽器が活躍する両曲の真価は、生演奏でこそ発揮される。ここはぜひ山田ならではの生命力溢れる音楽に浸りたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年1月号より)
第659回 名曲シリーズ
2023.1/13(金)19:00 サントリーホール
第7回 川崎マチネーシリーズ
1/15(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp