篠﨑史子ハープの個展ⅩⅤ 50周年記念

ハープの開拓者が示す創作の現在地

(c)満田聡

 篠﨑史子はハープというソロとしては決して光の当たることの多くなかった楽器の可能性を、作曲家との協業によって切り拓いていったもっとも重要な奏者で、委嘱初演作は40におよぼうとしている。未知へのチャレンジの場「ハープの個展」もいよいよ第15回、50周年というマイルストーンを迎える。

 プログラムはヘンデルのハープ協奏曲に始まり、ハープの透明な音色が神秘と官能を描き出すドビュッシーの「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」、さらには永遠の時を想わせる甘美な流れの上に、ハープが木の葉のように舞うマーラー「アダージェット」(交響曲第5番より)と、過去の巨匠たちの創造に目を向ける。弦楽合奏で篠﨑をサポートするのはベテラン大谷康子(ヴァイオリン)が率いる精鋭オケ。

 さらに2020年に書かれたばかりの権代敦彦「鎮魂(タマフリ・タマシズメ)」で創作の現在地を示す。カトリックに根差した独自の死生観に基づき精力的に作曲する権代の近作で、和太鼓の名手・林英哲の打ち鳴らす生命のパルスがハープと協奏する異形の音楽だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年10月号より)

2022.10/18(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京コンサーツ03-3200-9755 
https://www.tokyo-concerts.co.jp