挑戦を続ける若きチェリスト、“弦のトッパン”での待望のリサイタル
賢くて繊細な人、というのが、佐藤晴真のチェロからまず感じることだ。よく作品の内実を考えて、イメージを明確に見据えること、それを表現する精細な技術を磨いていること。いちど話したときにも、演奏と響き合うものを覚えた。挑戦するチェリストでありたい、という思いが若い彼にはまずあって、今後もさまざまな時代や国の作品に取り組んでいきたいと語っていた。
2018年にルトスワフスキ国際チェロ・コンクールで優勝、19年のミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門では日本人として初めて優勝して国際的な注目を集めた。ブラームスのソナタとリートによる『The Senses』、ドビュッシーとフランクをあわせた『SOUVENIR』と、趣を違えた2作のCDでも柔軟な感性を示している。共演ピアニストに関しても、作品の像に沿って、さまざまな個性に触れながら、毎回の探求を進めているようだ。
この春、トッパンホールでの初リサイタルは、メンデルスゾーンとシューマン、武満徹、ショスタコーヴィチという大きな振れ幅の選曲で、2作のソナタを両端に据えつつ、19世紀と20世紀の音楽を対峙させる。ピアニストは、作曲家としても多彩に活躍する加藤昌則。多様なスタイルへの知見を望んでのものだろう。
現在もベルリン芸術大学、イェンス=ペーター・マインツのもとで研鑽を積むが、現代曲だけでなく、とくに古典派やロマン派初期での優美な軽やかさに学ぶところが多いと言う。ドイツと20世紀は師の出自でもあるが、新時代の佐藤晴真が選りぬきの名作にどのような展望をもたらすのか楽しみだ。
文:青澤隆明
(ぶらあぼ2022年3月号より)
【佐藤晴真さんよりメッセージ】
この度は素晴らしいピアニスト・作曲家の加藤昌則さんをお迎えしてリサイタルをさせていただけること、大変嬉しく思っております!
前半は疾走感あふれるメンデルスゾーン、ロマンティックなシューマンから始まります。後半には、夜空の深遠を眺めるような武満徹の「オリオン」、嘆きと諧謔のショスタコーヴィチが続きます。
作曲家それぞれの追い求めた様々な音の姿を、是非お聴きいただければ幸いです。
それでは当日、会場でお待ちしております!
佐藤晴真
2022.3/23(水)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com