注目の親子共演と、英国ゆかりの名曲たち
東京シティ・フィルの1月定期では常任指揮者の高関健がイギリスゆかりの2曲を聴かせてくれる。
まずブリテンのオペラ《ピーター・グライムズ》より「4つの海の間奏曲」。原作はある漁師と地域コミュニティとの間に起きる悲劇で、海が全編に渡って重要な役割を果たす。「4つの海の間奏曲」は幕間に置かれた間奏曲を集めた一種の組曲で、夜明けから嵐まで、海のみせる様々な表情を活写している。
後半は交響曲第3番「スコットランド」。作曲者のメンデルスゾーンは初めてスコットランドを旅行した際にこの国の自然や風景に感化され、「フィンガルの洞窟」などの名作を残している。本作も完成はずっと後のことになるが、この旅行の際に着想された。
今回のコンサートにはもう一つ、大きな見どころがある。2曲の間に挟まれたラロ「スペイン交響曲」でヴァイオリン独奏を務める戸澤采紀は、史上最年少の15歳で日本音楽コンクールに優勝したが、当時から肝の据わった堂々たる表現が話題を呼んだ。その後ドイツに渡り、ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリンコンクールで最高位に入賞するなど、現在も進境著しい。選曲は本人の希望とのことだが、がっちりとした管弦楽を向こうにスペインの魂を情熱的に歌う大作にチャレンジしてきたあたりに、伸び盛りの戸澤の充実ぶりが窺える。
実は、彼女は東京シティ・フィルのコンマス戸澤哲夫の愛娘でもある。独奏のパッションや色彩感を、オーケストラを率いる父はどんな風に支え、盛り立てていくのかーー親子共演の行方にも注目したい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年12月号より)
第348回 定期演奏会
2022.1/15(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp