Trio Rizzle meets イリア・グリンゴルツ(ヴァイオリン)

鬼才と俊英たちが描くディープな音楽世界

左より:毛利文香、笹沼 樹、田原綾子 ©大窪道治
右:イリア・グリンゴルツ ©Kaupo Kikkas

 「Trio Rizzle meets イリア・グリンゴルツ」。これは実にディープで刺激的な室内楽公演だ。トリオ・リズルは、桐朋学園大学の同級生、毛利文香(ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ)、笹沼樹(チェロ)による弦楽三重奏団。トッパンホールゆかりの俊英が集う同グループは、3人対等の高度なアンサンブルと鮮烈かつ瑞々しい音楽を聴かせ、やや隠れた形態に新たな輝きをもたらしている。今回は、前半にトリオでシューベルトの第2番とハンガリーの20世紀作曲家ヴェレシュの作品を披露。有名作曲家による稀少な本作と、師バルトーク譲りの重層的な傑作で、弦楽三重奏ならではの魅力を教示する。

 後半はグリンゴルツが加わる弦楽四重奏。彼はパガニーニの難曲をクールにこなす実力者で、別日(2/13)には無伴奏リサイタルを行うが、自ら弦楽四重奏団を主宰するだけに、当コラボにも清新な期待を抱かせる。演目は、ウクライナの現代作曲家シルヴェストロフの第1番と、ウクライナ出身の大家プロコフィエフの第2番「カバルダの主題による」。独特の静謐感が横溢した前者、カフカスの民俗音楽を用いた緊密かつ親しみやすい後者ともに、実演で味わう稀少な機会となる。

 スイスに亡命したヴェレシュ、現在の戦禍でドイツに避難したシルヴェストロフ、大戦中の疎開先の音楽を用いたプロコフィエフの作品が並ぶ本プロは、世界の在り方に一石を投じ、ウィーン土着のシューベルトを含めて民族性を再考させる、示唆に富んだ内容となっている。トッパンホール以外ではまず聴けないこの公演、ぜひとも生で体験したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年1月号より)

2024.2/16(金)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com

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