エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ)

ベルカントの女王の健在ぶりを目撃する!

©http://lukasbeck.com
©http://lukasbeck.com
 もちろん古希を過ぎてからも、舞台に立つ歌手はいないではない。しかし、最高音が必要なコロラトゥーラの分野で、オペラの舞台でなお大活躍を続けるソプラノは、まさに古来稀なり、だ。なにしろ、2018年には「デビュー50周年」を祝う記念コンサートが、これまで活動の本拠にしてきたウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、チューリッヒ歌劇場で開催される。彼女は1968年にブラティスラヴァの歌劇場に《セビリアの理髪師》のロジーナでデビューしている。それからじつに、半世紀にわたりプリマドンナとして第一線で活躍し続けているのだ。
 日本には1980年にウィーン国立歌劇場と共に初来日、カール・ベーム指揮の《ナクソス島のアリアドネ》ツェルビネッタで、驚異的な超絶技巧を披露した。その空気のように軽やかで、宙を舞うようにやわらかなコロラトゥーラに、日本の聴衆はすっかり魅了された。それからは来日のたびに日本の聴衆との絆が深まり、日本にも熱烈なファンが大勢いる。年を重ねても声の艶は失われず、最高音もゆるぎない。独特の大きな弧を描くようにのびる高音と深い表現力に、そのステージを見た人は彼女の魅力のとりこになってしまうのだ。
 今回のコンサートでは、これまで彼女が舞台で歌ってきたお得意のベルカント・アリアが並ぶ。しかも《ルチア》と《清教徒》の2つの長い“狂乱の場”まで歌うのだ。さらに近年になって開拓した新しいレパートリー、《異国の女》の珍しいアリアまで。常に挑戦しつづける、グルベローヴァの衰えないエネルギーに、感嘆!
文:石戸谷結子
(ぶらあぼ 2016年10月号から)

エディタ・グルベローヴァ オペラ名曲を歌う〜2つの狂乱の場〜
11/9(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:コンサート・ドアーズ03-3544-4577
http://www.concertdoors.com

他公演
10/19(水)茨城県立県民文化センター(029-241-1166)
11/12(土)川口総合文化センター リリア(048-254-9900)