平井丈一朗(チェロ/審査委員長) & 平井秀明(指揮/実行委員長)

平井康三郎声楽コンクール創設を語る

 1920年代から70年余の活動期間に膨大な作品を残した作曲家・平井康三郎(1910〜2002)。全創作の中で、大きなウェイトを占めるのが、〈平城山(ならやま)〉や〈ゆりかご〉などの名曲をはじめとする日本語の歌曲だ。今年の秋、その平井歌曲に特化した声楽コンクール「第1回 平井康三郎声楽コンクール」が開催され、6月に参加受付がスタートする。

 「平井歌曲はもちろん、ひいては日本歌曲のレパートリーが広がるきっかけにしたい」

 そう語るのは、コンクールの実行委員会会長と審査委員長を務める、康三郎の長男で世界的チェリストの平井丈一朗と、孫で実行委員長と審査委員を務める指揮者・作曲家の平井秀明。

丈一朗「父の作品は、外国人にもまったく違和感がなく非常に国際的。ところが演奏してみると、そこに必ず日本的な味わいが出てくる。この両面を持っているというのは特別なことで、しかも、たとえばヴァイオリンやチェロで弾いても、つまり言葉がなくても、立派な音楽になっている。本当に国際的な芸術歌曲なのです」

秀明「もちろん言葉はとても大事で、しっかり詩を読んでみると、言葉の一字一句にそって、旋律やハーモニー、テンポ、強弱が変化しているのがわかるはずです。日本語の行間を読むという感覚に、もうちょっと敏感になってほしいと感じることも少なくありません」

丈一朗「父は、日本語は本来芸術性が高い言語だと言っていました。発音の面でもイタリア語に近い、非常に声楽的な言葉だと」

 コンクールには、満20歳以上であれば、音楽歴や国籍を問わず参加可能だ。

丈一朗「父の曲は、びっくりするほど親しみやすいんですね。芸術性も優れているのですが、クラシックをまったく知らない人でも共感できる。そこは不思議なところです」

秀明「親しみやすいだけに演奏は難しい面もありますが、有名無名問わず参加していただければと思います。たとえば、さまざまな事情で第一線で活動していなくても、素晴らしい才能を持っている方もいらっしゃるでしょう。とくに声楽は、年齢を重ねてから良くなるケースもありますよね。人生のすべてが演奏に出ます。良い演奏であれば心に響きますから」

 コンクールは9月27日に第一次予選がスタートし、本選は10月12日。応募資格は予選開始時点で満20歳以上。国籍や音楽歴は不問。第一次・ニ次予選と本選(公開審査)でそれぞれ指定された課題曲から2曲ずつを選んで歌う。優勝賞金は30万円。2022年3月31日には入賞記念コンサートが予定されている。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2021年7月号より)

第1回 平井康三郎声楽コンクール
【申込期間】2021.6/15(火)〜7/30(金)必着
第一次予選 9/27(月)〜9/29(水) 
第二次予選 10/6(水)
本選 10/12(火) めぐろパーシモンホール(小)
問:平井康三郎声楽コンクール実行委員会03-6403-9846
https://www.arioso.co.jp
※コンクールの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。