井上道義(指揮) 東京交響楽団

達人たちが用意した得意のプロコフィエフ名曲メニュー

 東京交響楽団の東京オペラシティシリーズ第121回は、井上道義指揮によるプロコフィエフ・プログラム。東響とは今年3月の定期演奏会で得意のショスタコーヴィチを披露した井上が、続いて20世紀ロシアに活躍したもうひとりの天才に焦点を当てる。曲はピアノ協奏曲第3番と「ロメオとジュリエット」組曲より。プロコフィエフ屈指の人気曲が並ぶ。

 ピアノ協奏曲第3番でソロを務めるのは、6歳よりモスクワに渡り、名門グネーシン音楽学校とモスクワ音楽院で学んだ松田華音。幼少時よりロシアに住んでいるとあって、話すのも考えるのもロシア語、ロシア文学にもロシア語で親しんでいるという、真にロシアに育ったピアニストだ。2004年エドヴァルド・グリーグ国際ピアノ・コンクールでグランプリを受賞するなど、コンクール歴も輝かしい。プロコフィエフの音楽を作曲家の母語で理解できる日本人ピアニストは稀有な存在だけに、リリシズムやユーモア、アイロニーなど多様な要素が渾然一体となったピアノ協奏曲第3番の真価を伝えてくれることだろう。

 プロコフィエフはバレエ『ロメオとジュリエット』から3種類の組曲を編んでいるが、実際の演奏会では独自の選曲が行われることも多い。今回は井上道義版として、モンターギュ家とキャピュレット家、朝の踊り、ロメオとジュリエット、情景、メヌエット、朝のセレナーデ、アンティル諸島の娘たちの踊り、タイボルトの死、ジュリエットの墓前のロメオの計9曲が演奏される。鮮烈なプロコフィエフを期待できそうだ。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年6月号より)

東京オペラシティシリーズ 第121回
2021.6/12(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
https://tokyosymphony.jp