ドビュッシーと葛飾北斎 ―フランス音楽の中の日本と浮世絵

目と耳で鑑賞する北斎の美

 ドビュッシーの「海」のスコアの表紙には、先だって世界遺産登録された富士山を描いた北斎の版画が用いられている。19世紀後半、パリ万博での展示などをきっかけに、浮世絵をはじめとする日本のアートが欧州の人々の心をとらえ、ジャポニズムという一大流行へと発展する。これは主に美術のトレンドだが、ドビュッシーはここから詩的インスピレーションを受け、エキゾティックな音楽を残してもいる。浮世絵は光に弱く通常の展示では照明が抑えられているため、じっくり見るのが難しい。このたびボストン美術館に収蔵されている名品がこのたびデジタル化され、従来は見落とされがちだった細部も確認できるようになった。
独自の企画で異彩を放つHakuju Hallが、2014年2月に面白いコラボレーションを計画した。まず、北斎の版画をスクリーンに投影しながら鑑賞。デジタル化プロジェクトに携わった牧野健太郎氏が、浮世絵に隠された江戸時代の情報を読み解く。後半は三舩優子がこれを引き継ぎ、視覚的なポエジーを音へと変換したドビュッシーのピアノ作品を演奏する。間に挟まれた両者の対談は、北斎とドビュッシー、眼と耳の謎へと迫っていくことだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2013年12月号から)

★2014年2月20日(木)・Hakuju Hall Lコード:35156
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
http://www.hakujuhall.jp