知られざる20世紀前半の佳作を色彩豊かに描く
毎回独創的なプログラムが好評の、新日本フィル楽団員が企画する室内楽シリーズ。コンサートマスターの西江辰郎がプロデュースする今回は、19世紀末に生まれ20世紀にかけて活躍した同時代の作曲家、ベネズエラ生まれでフランスに帰化したアーン、ハンガリー人のコダーイ、ユダヤ系オーストリア人で合衆国に亡命したコルンゴルトの名曲が並ぶ。
アーンは歌曲で名を馳せたが、西江は〈クロリスに〉の譜面を見て素晴らしい作曲家に違いないと確信、水彩画のように淡く美しい弦楽四重奏曲第2番に出会った。西江、ビルマン聡平(以上ヴァイオリン)、高橋正人(ヴィオラ)、サミュエル・エリクソン(チェロ)の繊細な演奏に期待したい。
コダーイがハンガリーの民族音楽を芸術的に昇華させ、自らの作曲技法を確立した「ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲」は、ヴァイオリンとチェロが対等にやりとりする激しく情熱的な作品。西江とエリクソンの競演が楽しみだ。
コルンゴルト「ピアノ五重奏曲」はブラームスのそれにも匹敵する名曲。優れたピアニストでもあった作曲者が書いた技巧的なピアノを、第7回トリエステ国際室内楽コンクール(イタリア)デュオ最高位受賞の坂野伊都子が担う。新日本フィルメンバーとの緊密なアンサンブルが聴けるだろう。
西江は「今回の曲目はどれも素晴らしい作品。演奏機会のめったにない曲の中から、共感し、取り組んでみたい、聴いていただきたいと思う作品を集めてみました」と語る。これは聴き逃せないコンサートだ。
文:長谷川京介
(ぶらあぼ2021年3月号より)
2021.4/14(水)19:15 すみだトリフォニーホール(小)
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
https://www.njp.or.jp