深化を続けるカルテットの妙味溢れるプログラム
2019年に結成30周年を迎えたエルデーディ弦楽四重奏団は、15年から第一生命ホールのステージで、後期ベートーヴェンのカルテットに継続して取り組んだ。丹念に1曲ずつ作りこむ姿勢が、透明感あるしなやかな音楽を生む。清流のような演奏はこれまでに3枚のディスクに結実し、いずれも高い評価を受けてきた。
18年度からはこれに続くシリーズ「ベートーヴェン充実の中期とモーツァルト純化の晩年」をスタートさせている。モーツァルトの3曲の「プロイセン王」のいずれかを中期ベートーヴェンと組み合わせ、近代の曲でアクセントをつけるというプログラミングもしゃれている。
2月14日はシリーズ第3回となり、ベートーヴェンから第10番「ハープ」を選んで、モーツァルトの第23番「プロイセン王第3番」と合わせた。「ハープ」は中期とはいっても「ラズモフスキー」の雄大な楽曲構成から、より軽やかで自由なスタイルを模索しはじめる、後期への橋渡しともいえる作品で、それだけに滋味にあふれている。一方、「プロイセン王」は啓蒙君主として知られたフリードリッヒ大王の甥で、自身もチェロをたしなんだフリードリッヒ・ヴィルヘルム2世の委嘱で書かれた。エルデーディの4人はこの2曲の間にどんな関係線を引いていくだろうか。
近代の作品としてストラヴィンスキーの「弦楽四重奏のための3つの小品」が挟まれる。原始主義のグロテスクな身振りをまとった音楽が、モーツァルトからベートーヴェンへという歴史の連続性に打ち込む強烈な楔も聴きどころ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年1月号より)
クァルテット・ウィークエンド 2020-2021 エルデーディ弦楽四重奏団
〜ベートーヴェン充実の中期とモーツァルト純化の晩年Ⅲ
2021.2/14(日)14:00 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
https://www.triton-arts.net