三浦はつみ オルガン・リサイタル ルーシーとの対話─惜別のとき

23年間の輝かしき集大成を聴く

C)平舘 平

1998年の横浜みなとみらいホール開館以来務めてきたホールオルガニストを12月で退く。三浦はつみは演奏やオルガン公演の立案はもちろん、つねに楽器の状態を見極め、調整し、ゲストの奏者たちを迎えるホスト役も担ってきた。「ルーシー」の愛称で呼ばれるこの楽器を世界で一番知り尽くした存在だ。

オルガンやその作品は宗教と密接だ。以前彼女は、パイプが、天上と地上を結ぶ通路のように感じると話した。バッハ「前奏曲とフーガ BWV546」はハ短調。3つの♭は三位一体の象徴でもある。日本のオルガン曲の第一人者・坂本日菜の2曲は、キリスト者だった八木重吉の詩によるソプラノ歌手(共演:田中綾乃)を伴う新作「涙の日」初演と、昨年三浦のために書いた「九品来迎図Ⅳ」。阿弥陀来迎を描いた平等院壁画の浄土思想はキリスト教とも遠く重なる。そして復活祭の聖歌が全曲を貫くヴィドールのオルガン交響曲第10番「ローマ風」。三浦とルーシーの輝かしい23年間の集大成が天地に満ちる。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2020年11月号より)

2020.11/18(水)19:00 横浜みなとみらいホール
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000
https://mmh.yafjp.org/mmh/