神話や文学にインスパイアされた音楽に時代の息吹を感じて
ハープのオリジナル作品は素敵な名作の宝庫であり、その中からどの作品を選び、配列するかでハーピストの審美眼が問われる。東京交響楽団の首席奏者を務める景山梨乃が東京オペラシティの先鋭的企画「B→C」のために選んだのは、詩や小説など文学からインスパイアされた作品たち。
ヴェルレーヌの詩から発想を得たフォーレ晩年の瀟洒な作品「塔の中の王妃」で幕を開け、ハーピストが打楽器も演奏するシェーファーの「アリアドネの冠」(ギリシャ神話)や、テノール歌手(鈴木准)と共演するブリテンの「聖ナーシサスの死」(T.S.エリオット)、カプレによるやや不気味な室内楽作品「エドガー・アラン・ポーの『赤死病の仮面』による〈幻想的な物語〉」(共演:東京交響楽団弦楽四重奏)などが並ぶ。これらに加えてこのシリーズならではの新作初演は、気鋭のグループ「Ensemble FOVE」を主宰する坂東祐大へ委嘱。もちろん「B」、つまりJ.S.バッハの作品も加え、聴くと同時に観る楽しみも堪能できる一夜だ。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2020年6月号より)
2020.11/10(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール(6/16の振替公演)
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp