充実の時を迎えたチェリストの魅力が詰まった60分
平日昼間の第一生命ホール、音楽ライター山野雄大の案内で送るシリーズ「雄大と行く 昼の音楽さんぽ」。今秋開催予定の第22回は、チェロの若き名匠、横坂源が登場する。横坂は桐朋学園からシュトゥットガルトとフライブルクの音楽大学に学び、全日本ビバホール・チェロコンクールで最年少優勝、難関のミュンヘン国際音楽コンクールで第2位のほか、出光音楽賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞、ホテルオークラ音楽賞など受賞歴も多数。13歳で東京交響楽団と共演して以来、2019/20シーズンには演奏活動20周年を迎え、すでに経験豊富な風格すら感じさせる代表的名手だ。
この60分のステージに選ばれたのは、ピアソラ「3つの小品」、ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第4番、フランクのヴァイオリン・ソナタ(チェロとピアノ編)という、それぞれ20世紀、古典派、ロマン派の名作曲家の名品集。なかでもベートーヴェン40代半ばのソナタ第4番は、瞑想的な序奏と力強い主部をもつ、中後期両面の魅力が混じった15分ほどのユニークな1曲で、これを現在の横坂がどう解釈するのか注目したい。フランクの名作はチェロで弾かれることも多く、横坂の力強い技巧でたっぷりと楽しめるに違いない。各曲でチェロに劣らない役割と難度をもつピアノは、同じく日本の若き名匠と言える存在で、ドイツを本拠とする北村朋幹が受け持つ。いま充実のときを迎える横坂による名曲プロ、彼のエネルギーと円熟味を併せもつ演奏でじっくり味わいたい。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年6月号より)
2020.10/7(水)11:15 第一生命ホール
問:トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702
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