上岡敏之(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

後期ロマン派から新ウィーン楽派へ―濃厚な色香漂う響き


 1月の定期演奏会でシューベルトの交響曲第6番やメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」を演奏して、幸先の良い2020年のスタートを切った上岡敏之&新日本フィル。3月の定期演奏会でも、上岡が得意とするドイツ=オーストリア音楽を取り上げる。
 プログラムは、ウェーベルンの「パッサカリア」で始まる。そして、それはメインのブラームスの交響曲第4番第4楽章のパッサカリアへとつながる。「パッサカリア」とは、固執低音(オスティナート)にもとづく変奏曲をいう。上岡はとりわけ音色に対するこだわりが強く、音色旋律という概念を持つようになるウェーベルンの初期の作品をどう再現するのか、非常に注目される。

 ウェーベルンの「パッサカリア」は、もう一方で、彼とともにシェーンベルクの弟子であったベルクの作品につながる。いわゆる新ウィーン楽派。彼らは十二音技法で知られるが、この日演奏されるベルクの「7つの初期の歌曲」は、彼の作曲家としての初期の作品であり、微妙な調性感を残す。その官能的な甘美さは、熟れた果実を思わせる。作曲年代も、ウェーベルンの「パッサカリア」とほぼ同じ、1908年頃である。独唱を務めるのはユリアーネ・バンゼ。オペラでもリートでも活躍するドイツ出身の彼女は、歌手として今が最も脂ののっている時期ではないだろうか。アバド&ウィーン・フィルとベルクの「アルテンベルク歌曲集」や「ルル」組曲の録音を残す名歌手だけに、「7つの初期の歌曲」での歌声が楽しみである。
文:山田治生
(ぶらあぼ2020年3月号より)


*新型コロナウイルスの感染症の拡大防止の観点から、本公演は延期となりました。(3/10主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

第617回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉
2020.3/19(木)19:00 サントリーホール

特別演奏会 サファイア〈横浜みなとみらいシリーズ〉 第11回
3/21(土)14:00 横浜みなとみらいホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
https://www.njp.or.jp