全国共同制作オペラ(白河・金沢・東京) ヴェルディ:歌劇《ラ・トラヴィアータ》全幕(新演出・日本語字幕付・原語上演)

新たな視点で描く“ヴィオレッタという生き方”

左より:矢内原美邦/ヘンリク・シェーファー C)Maurice Lammerts van Buren/エヴァ・メイ/宮里直樹 C)深谷義宣 auraY2

 全国の公共ホール・芸術団体が連携して新演出のオペラを共同制作する「全国共同制作オペラ」シリーズの最新作、《ラ・トラヴィアータ》が、2020年2月に福島・白河文化交流館コミネス、石川・金沢歌劇座、東京芸術劇場で上演される。井上道義が総監督・指揮、振付家・ダンサーの森山開次が演出・振付を務めた19年の《ドン・ジョヴァンニ》に続き、今回もダンス界・演劇界で独自の存在感を放つ矢内原美邦が演出・振付を担当し、指揮にスウェーデンのイェーテボリ国立歌劇場音楽監督ヘンリク・シェーファー、主役ヴィオレッタにエヴァ・メイを迎える。

 《ラ・トラヴィアータ》は、1848年にフランスの小説家アレクサンドル・デュマ・フィスが発表した小説『椿姫』に基づく、ヴェルディの代表作のひとつ。デュマ自身が手がけた戯曲版『椿姫』をパリで観劇したヴェルディがオペラ化を望み、53年にヴェネツィアで初演された。原作小説に独自の変更を加え、富豪の愛人としてパリの裏社交界を生きる高級娼婦ヴィオレッタと、南仏出身の青年貴族アルフレードとの純愛が、19世紀の社会通念によって砕かれていく悲恋の物語だ。

 題名の《ラ・トラヴィアータ》とは、「道を踏み外した女」の意。「ヴィオレッタは、さまざまな掟に縛られた社会を生き抜くために、余分なものをどんどん外していった女性。対して娼婦仲間のフローラは、その社会に留まろうとした女性。どちらの道が正しいか? どちらも正解だったと思うし、自分にとって正しい道を選び生き抜く女性の強さを描きたい」と、演出の矢内原は語る。

 時代と場所の設定は敢えて明確にせず、衣裳、美術にも斬新なアイディアを入れていく。たとえば、ヴィオレッタたちのまとう“掟”はドレスの過剰な装飾で象徴的に表現される。舞台美術は可動し、日常と虚構の境界をえぐる独創的なヴィジュアル・アーティスト、高橋啓祐の映像を投影するスクリーンともなる。

 期待のダンス場面に関しては、サプライズが待っているとのこと。オーディションで選抜された、多様な身体性を有する5人の俳優・ダンサーが活躍するほか、合唱にも動きがあり、装置も手動で展開され舞台空間に新たなダイナミズムを与える。歌手の動きや舞台上のあり方にも、矢内原ならではの創意が加えられるという。「“出番の少ない役”がない作品になります」。

 一方、「アルフレードの多様な面を出して行きたい」(アルフレード役の宮里直樹)、「新演出からの新たな気づきに期待している」(ジェルモン役の三浦克次)と、世界的スターのメイを迎えて新演出に取り組む歌手陣も気合いが入る。

 これまで矢内原は、現代社会や古典の主題から普遍的な個と社会の葛藤を汲み取り、映像、ファッション、音楽と鋭く切り結ぶ身体表現で高く評価されてきた。待望のオペラ初演出だが、「普通のオペラではなく、現代から未来につながる新しいオペラを目指したい」との言葉のとおり、現代の観客に“刺さる”オペラになるに違いない。
文:岡見さえ
(ぶらあぼ2020年1月号より)

2020.2/9(日)14:00 白河文化交流館コミネス
問:白河文化交流館コミネス0248-23-5300
http://www.cominess.jp

2/16(日)14:00 金沢歌劇座
問:金沢芸術創造財団076-223-9898
https://www.kanazawa-arts.or.jp

2/22(土)14:00 東京芸術劇場コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
https://www.geigeki.jp