大阪4大オケ 2020年度シーズンプログラム共同記者発表会

 関西ならではの独自企画「大阪4大オケ」の2020年度シーズンプログラムの共同記者発表会が11月26日に行われた。4大オケとは大阪を拠点に活動している、大阪交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団のこと。今回の会見では、2020年に生誕250年を迎えるベートーヴェンがキーワードの一つになっていた。

会見の模様
写真提供:関西フィルハーモニー管弦楽団

 まず創立50周年を迎える関西フィル。これまでの歩みを概観して、「こころ奏でて50年 響け世界に、とどけ未来へ」をスローガンに50周年企画を推進するという。音楽監督オーギュスタン・デュメイは、古典音楽を中心に、「作品ごとの特徴を捉えて、スタイルとフレージングを正しく演奏することにフォーカスしたい」と語った。注目はベートーヴェンの三重協奏曲で、自身のヴァイオリンにフランク・ブラレイのピアノ、宮田大のチェロが加わる。事業の締めくくりとしての21年のヨーロッパツアー(細川俊夫の新作初演を含む)についても話した。首席指揮者の藤岡幸夫は、BSテレビ東京『エンター・ザ・ミュージック』出演や新作初演の経験を踏まえ、「解りやすい調性音楽の新作を取り上げて、新しい聴衆層を開拓したい」と述べた。定期演奏会ではエルガーや貴志康一の交響曲が演奏される。桂冠指揮者の飯守泰次郎は、初指揮から30年を振り返り、演奏会形式オペラ公演などに触れた。2020年は9年続いたブルックナー・ツィルクスを珍しい第0番と第00番で完結させる。また、大阪国際フェスティバルの中で得意のワーグナー《ニーベルングの指環》を3時間のハイライト版にするのも楽しみだ。

 大阪響は創立40周年を記念して、トーマス・ザンデルリンクや小泉ひろしらゆかりの指揮者を招いてメモリアル・シリーズを開く。定期演奏会と名曲コンサートのプログラムには必ずベートーヴェンの曲を入れる。4月より名誉指揮者に就任する外山雄三はこのオケが「どんな要求にも一生懸命応えてくれるが、素直でこだわりが弱いところが心配。若い楽団なのでこれからに期待できる」と言う。自身も定期でベートーヴェンの第8番、ブラームスの第1番を振る。

 大阪フィルでは、音楽監督の尾高忠明が記念年に因んだベートーヴェンの大作「ミサ・ソレムニス」、マーラーの第5番、ブルックナーの第9番を取り上げ、ツィクルスではチャイコフスキーの全交響曲を振る。客演では、デュトワの「ペトルーシュカ」、定期初登場の沼尻竜典のマーラー「大地の歌」、インバルのショスタコーヴィチの第10番が注目される。

 日本センチュリー響は、秋山和慶が4月にミュージックアドバイザーに就任し、ベートーヴェン「英雄」、ブルックナー「ロマンティック」などを指揮する。日本センチュリー響は困難な状況でも「明るく頑張っている」印象があり、ルーティンワークに堕することなく「明るく楽しい音楽を作っていきたい」とのこと。首席指揮者・飯森範親では、マーラー「巨人」(5楽章版)、演奏会形式のベートーヴェン《フィデリオ》、リゲティとバルトーク(独奏:イザベル・ファウスト)や名物のハイドンマラソンに期待。

 大阪国際フェスティバル恒例の4大オケの競演は、ベートーヴェンの交響曲で、尾高=大阪フィル「英雄」、デュメイ=関西フィル「運命」、飯森=日本センチュリー響「田園」、外山=大阪響「第7番」という華やかなラインアップであり、記念年の目玉のひとつになるだろう。
取材・文:横原千史

※各楽団のスケジュール詳細は、下記ウェブサイトでご確認ください。
大阪交響楽団 http://sym.jp
大阪フィルハーモニー交響楽団 https://www.osaka-phil.com
関西フィルハーモニー管弦楽団 https://kansaiphil.jp
日本センチュリー交響楽団 http://www.century-orchestra.jp