ミュンヘン国際音楽コンクール優勝!世界へと羽ばたいた逸材が満を持してデビュー
先ごろ、難関として知られるミュンヘン国際音楽コンクールに日本人として初めての優勝を果たしたチェロの佐藤晴真が、紀尾井ホールでリサイタルを開く。本格デビューと位置付けられていたリサイタルだが、コンクールの結果を受けて、期せずして凱旋公演となった次第だ。
まずはミュンヘン国際音楽コンクールの率直な感想を聞いた。
「正直なところ、コンクールで結果を残すこと以上に、これから出会う聴衆のみなさんに認めていただくことこそが、いちばん難しいことなのだろうと思っています。この結果を始まりでも終わりでもなく、ひとつのきっかけとしてとらえ、これからも気を緩めず誠実に音楽と向き合っていきたいと思います」
佐藤は名古屋出身の21歳。現在はベルリン芸術大学にてJ=P.マインツに師事している。コンクールからは結果だけではなく、多くを得られたという。
「この半年間ほどは、ほとんどコンクールにのみフォーカスしていたので、基礎技術から音色、音楽的解釈などを一から見直すことができました。同時に仕上げなければいけない曲数が多く、とてもストレスフルな準備期間でしたが、その緊張感とどう向き合うかという“自分との勝負”が上手くできた、という印象です」
紀尾井ホールのリサイタルでは、ピアノの薗田奈緒子とともに、ドビュッシーのチェロ・ソナタ、プーランクのチェロ・ソナタ、さらにブラームスのチェロ・ソナタ第2番や「5つの歌」より「愛の歌」など、歌曲の編曲作品を演奏する。プログラムの狙いは?
「今回の大きなテーマはフランス音楽とドイツ音楽。どの作品も息をのむような感動の瞬間が数え切れないほどあります。作曲された国や時代に関係なく音楽というひとつの大きな“本”の中で、みなさまと一緒に旅することができればと思い、あえてまったく違うジャンルの作品をプログラムに組み込みました。
よくチェロは人の声に似ていると言われます。人にもよるのでしょうが、僕がチェロに惹かれるのは、少なくとも僕の声が似ているからだと、最近思い始めました(笑)。僕の声はかなり低く、聞き取りづらいほどなのですが、ブラームスは低音をチェロの作品によく用いてくれます。ですので僕の場合は、チェロを通して自分の声で歌っているような感覚になれば、それこそが歌心になるのだと考えています」
将来的に目指している音楽家像について尋ねてみた。
「チェリストのジャン=ギアン・ケラスさんのハイドンのチェロ協奏曲、そしてヴァイオリニストの佐藤俊介さんのイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタを聴いたときの感動はとても鮮烈に覚えています。彼らのように、国や時代の垣根を超えて、多岐にわたる音楽活動ができれば最高に嬉しいですね」
取材・文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2019年11月号より)
佐藤晴真 チェロ・リサイタル
2019.12/6(金)19:00 紀尾井ホール
問:AMATI 03-3560-3010
http://amati-tokyo.com/