大野和士指揮・都響12月定期にチェロ首席・伊東裕がソリストとして登場!

左:大野和士 ©Fumiaki Fujimoto
右:伊東 裕 ©T.Tairadate

 音楽監督・大野和士の登壇する12月の都響定期は、聴きどころ多数。まず挙げたいのは、ハイドンのチェロ協奏曲第1番 ハ長調で伊東裕がソロを務めること。2022年に都響チェロ首席奏者に就任した伊東は、日本音楽コンクール第1位、葵トリオのメンバーとしても知られる、若手を代表する名手のひとり。その音色と歌心のすばらしさは無二のもので、聴けば誰もが“推し”になってしまうほど。いよいよソリストとしても登場する好機、お聴き逃がしなきよう。

 そして、ショスタコーヴィチの交響曲第8番をいま聴けること。大戦中の1943年に書かれた作曲家の代表的傑作で、暗い空気に覆われた緻密な音楽が、当時のソヴィエトにおける心象風景を喚起する。全5楽章約60分、深刻なハ短調で始まり、かそけき弱音から破滅的大音響までの多様な場面を経て、不思議に柔和なハ長調の結尾に至る。戦争の恐怖や専制政治の理不尽さを伝える本作の意義が、残念ながらますます重い意味合いを帯びる世界情勢の現在、必聴の大作。これをショスタコーヴィチ演奏に長けた都響の強烈なサウンドと、大野の渾身のタクトで体験できるのである。

 ハイドンとショスタコーヴィチの組み合わせもいい。「交響曲」の形式を完成させた古典派の巨匠と、廃れかけた「交響曲」を高みに引き上げ直した20世紀の巨人。その精神は深く通じ、共鳴し合う。演奏会全体でハ調の長→短→長の流れになるのも興味深い。俊英による爽やかな愉悦から壮絶な大編成の迫力まで、コンサートならではの得難い時間になる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2024年12月号より)

【出演者変更】
指揮の大野和士は、「頸椎の外科的措置が必要」との医師の診断により、12月から1月下旬まで療養することとなったため、本公演に出演できなくなりました。
代わりましてロバート・トレヴィーノが出演します。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。(11/21主催者発表)

大野和士(指揮) 東京都交響楽団
第1012回 定期演奏会Bシリーズ

2024.12/4(水)19:00 サントリーホール
第1013回 定期演奏会Aシリーズ
2024.12/5(木)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド0570-056-057
https://www.tmso.or.jp