アンナ・フェドロヴァ(ピアノ)

世界から注目を集める新鋭ピアニストがロシアの名門楽団と共演

©Marco Borggreve

 
 ウクライナ出身のアンナ・フェドロヴァは、数々のピアノコンクールにて優勝経験を持ち、オランダを拠点に国際的な活動を展開している逸材。今年の3月には、湯浅卓雄の指揮で神奈川フィルハーモニー管弦楽団とマイケル・ナイマンのピアノ協奏曲を演奏し、国内でも注目を集めたばかりだ。
「ナイマンのコンチェルトでは、もちろんピアノが重要な役割を果たしますが、オーケストラのシステムに完全に組み込まれているのが面白いです。複雑なリズムが短い周期で変化してめまぐるしいけれど、とても美しい曲ですね」

 7月には一転、ヴァレリー・ポリャンスキー率いる名門ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》によるオール・チャイコフスキー・プログラムで、王道のピアノ協奏曲第1番に臨む。
「これまでに欧州をはじめ様々なオーケストラと共演していますが、そのたびに新鮮さと自由さが生まれるのを感じる名曲。今回、マエストロとも初対面ですし、実はこの曲をロシアのオーケストラと一緒に演奏するのも初めてのことなので、少し興奮しています。私にとって何か特別なものになりそうです!」

 YouTube上には昨年10月のコンセルトヘボウにて、北西ドイツ・フィルハーモニー管弦楽団と同曲を演奏する彼女の熱いパフォーマンスがアップされており、これまでに50万回以上視聴を重ねている。
「初めての共演者とは、できればリハーサルの前に打ち合わせの時間を持ちたい。この曲にはピアノが優先されるべきポイントがたくさんあります。特に私はテンポには比較的こだわりがあるので、そこを理解してもらえたら理想的。でも何より、お互いの解釈が呼応し合って曲が完成されていくことが重要ですね」

 あのマルタ・アルゲリッチからも絶賛されていることで知られる彼女。その豊潤で力強いピアニズムは5歳から18歳まで師事した、ルイセンコ記念キエフ音楽学校のボリス・フェドロフ(実父)によって育成されたものだ。
「親子ゆえに簡単にはいかない場面もありましたが、今では父に教わったことを感謝しています。私の好みやテクニックのほぼ全てが父譲り(笑)なのです。作曲家にこだわらず、いろんな作品を弾いてみたいのもそう。いつも今、取り組んでいる曲がいちばん好き。次のシーズンではスクリャービンやグリーグに夢中になりそうです」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ2019年5月号より)

ヴァレリー・ポリャンスキー(指揮) ロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》との共演
2019.7/16(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール(テンポプリモ03-3524-1221)
7/25(木)19:00 山口/周南市文化会館(0834-22-8787)
※ポリャンスキー(指揮)ロシア国立響の公演情報については、下記ウェブサイトでご確認ください。 
http://www.tempoprimo.co.jp/