南国に今年も響く美しいハーモニー
音楽の花の咲き乱れる季節が、南国・宮崎へ再び巡ってくる。1996年に、ヴァイオリンの巨匠・故アイザック・スターンが内外の一流演奏家たちと紡いだ、瑞々しい響きと共に始まった「宮崎国際音楽祭」。24回目となる今年も、我が国を代表する名ヴァイオリニスト・徳永二男を音楽監督に、やはりヴァイオリンの名匠でこの音楽祭の“常連”、ピンカス・ズーカーマンら世界的奏者らが集結。4月28日から5月19日まで、メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)を主会場に、妙なるハーモニーを奏でる。
「豊かな心の表現を伴った音楽を」との理念のもと、当時“最後の巨匠”とも呼ばれていたスターンを徳永らが招請し、96年に「宮崎国際室内楽音楽祭」としてスタート。かつてスターンがこの地へと帯同した愛弟子の一人だったズーカーマンも、今や世界最高峰の巨匠に。そんな彼が、今なお音楽祭との繋がりを絶やさないことに、その深い意義が感じ取れよう。四半世紀という大きな節目を前にした今回、一層の盛り上がりが期待される。
音楽祭の軸を成す「メインプログラム」の幕開けを告げるのが、ピアノの辻井伸行、ヴァイオリンの三浦文彰や川久保賜紀ら気鋭の名手たち。シューマン「ピアノ五重奏曲」、ショパン「ピアノ協奏曲第2番」(室内楽版)と、珠玉の名曲を披露する(5/5)。そして、作曲家でピアニストの野平一郎は、語りに女優の西田ひかるを迎えて。明治から昭和にかけて、日本のクラシック黎明期を支えた先駆者たちの、音と言葉による物語を綴る(5/10)。
続いて、例年と同様、特別編成の「宮崎国際音楽祭管弦楽団」が登場。ズーカーマンの指揮、ソプラノの三宅理恵で、マーラー「交響曲第4番」を。ズーカーマンはヴィオラを操り、弾き振りで三浦のヴァイオリンと共にソリストを務め、モーツァルト「協奏交響曲K.364」を弾く(5/12)。さらに、音楽祭管弦楽団は広上淳一の指揮、ソプラノ中村恵理(ミミ)ほか豪華キャストにより、プッチーニ《ラ・ボエーム》全曲(演奏会形式)も上演する(5/19)。
また、ウィーン・フィルのコンサートマスターを45年にわたって務めあげた、ヴァイオリン界のレジェンド、ライナー・キュッヒルは、マイスキー父娘との顔合わせ。チェロの巨匠ミッシャ、ピアノの名手リリーと共に、チャイコフスキー「偉大な芸術家の思い出に」で円熟のアンサンブルを聴かせるほか、バッハの無伴奏作品も併せて披露する(5/15)。
「スペシャルプログラム」の中で、特にユニークなのは、3つのホールで開かれる7つのステージが、どれもワンコインで楽しめる「気軽にクラシック〜500円コンサートの日」(5/3)。また、チェロの古川展生ら弦楽合奏によるピアソラ(4/29)や、三浦と辻井のデュオによるブラームスやフランクの名ソナタ(5/6)、ズーカーマンを核にしてのチャイコフスキーの弦楽六重奏曲「フィレンツェの思い出」(5/11)など、体感してみたいプログラムが目白押しだ。
また、期間中は子どもを対象としたステージや、街角でのコンサートなどが行われる他、宮崎市内だけでなく、串間市や川南町でのサテライト公演も開催される。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年5月号より)
第24回 宮崎国際音楽祭
2019.4/28(日)〜5/19(日) メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場) 他
問:宮崎国際音楽祭事務局0985-28-3208
http://www.mmfes.jp/2019/