マエストロ大野和士と近藤良平率いるコンドルズがコラボを展開する稀有なステージ!
祝祭にふさわしいエネルギッシュな舞台作品
「サラダ音楽祭」のメインコンサート「プルミエ・ガラ」の第Ⅱ部、つまり音楽祭の「締め」に演奏されるのはカール・オルフ(1895〜1982)の代表作《カルミナ・ブラーナ》(1936年作曲)。この音楽祭の、いわば“メインのメイン”だ。
「カルミナ・ブラーナ」はラテン語で「ボイエルンの歌」の意味。1803年、現在のドイツ・バイエルン州にあるボイエルン修道院で発見された、11~13世紀のものと考えられる古い詩歌集の写本である。オルフはこの詩を用いて、「春」「酒」「愛」をテーマに3部から成る全25曲の大規模な声楽作品を作曲した。これが今回演奏される「カルミナ・ブラーナ」だ。選ばれた詩は若者たちの自由で奔放なエネルギーに溢れ、「修道院の詩歌集」というイメージとは遠い。
オルフはこの作品を、舞踊付きの作品として構想しており、特に歌劇場ではしばしばバレエを伴って上演される。本来が舞台作品なのだ。と来れば、新国立劇場の現芸術監督であり、日本人指揮者の中で別格の劇場経験を持つ大野和士ほどこの作品に適した指揮者はいない。その大野が起用した舞踊集団は、学ラン(学生服)姿も印象的な、男ばかりの「コンドルズ」。どう考えても、ただ音楽に合わせて踊るだけではなさそうだ。何が飛び出すかは当日のお楽しみ!
歌手たちの名技に注目
第1曲〈おお、運命の女神よ〉は、テレビ番組の効果音楽などできっと一度は耳にしたことがあるはず。メロディやリズム・パターンの執拗な繰り返しは生命の根源的なパワーを生み出すかのようで、聴いているだけでも血が騒ぐ。作品全体で活躍する合唱(新国立劇場合唱団)はもちろん聴きごたえ十分だが、ここぞという場面で登場する3人のソリストたちの活躍も大きな聴きどころだ。
まずはソプラノ(光岡暁恵)。第21曲〈天秤棒を心にかけて〉は息の長い旋律が美しい。短いながら第23曲〈愛しいお方〉の目の覚めるような高音は、後に続く合唱のエネルギッシュなフィナーレを導く。
たった一曲だけの出番で強烈なインパクトを放つのがテノール。第12曲〈昔は湖に住んでいた〉は、真っ黒に焼かれる白鳥の悲哀を高いC音やD音で歌う。実声のテノールが歌うかカウンターテナーを起用するかの選択肢があるが、生前のオルフが直接監修した録音では後者。世界の舞台で活躍する藤木大地の起用で万全!
この作品のバリトン・ソロ(小林大祐)はほとんど殺人的だ。第4曲〈太陽は万物をやわらげる〉の深い瞑想から、物をなぎ倒して進むようなパワフルな第11曲〈怒りに燃え上がって〉、さらには高音のファルセットを駆使するテクニカルな第16曲〈昼、夜、そしてあらゆるものが〉など、オペラ全幕を歌うのと同じぐらいのエネルギーが要求されている。
一度聴くとしばらく耳から離れない濃厚な音楽。大野&都響の《カルミナ・ブラーナ》は、もうまもなく!
文:宮本明
【Information】
TOKYO MET Salad MUSIC FESTIVAL 2018
トーキョー・メット・サラダ・ミュージック・フェスティバル 2018[サラダ音楽祭]
2018.9/17(月・祝)東京芸術劇場コンサートホール/池袋エリア(公園・商業施設)
[OK!オーケストラ] 13:00 東京芸術劇場コンサートホール
[音楽祭メインコンサート〈プルミエ・ガラ〉カルミナ・ブラーナ × Dance!!] 19:00 東京芸術劇場コンサートホール
※無料コンサート、ワークショップなど詳細は下記ウェブサイトをご確認ください。
問:サラダ音楽祭事務局03-5444-2786
http://salad-music-fes.com/