【CD】オルフ:カルミナ・ブラーナ/パーヴォ・ヤルヴィ&チューリヒ・トーンハレ管

 「カルミナ・ブラーナ」はヤルヴィがN響の首席指揮者時代に大変な評判を呼んだこともあり、当盤への期待は非常に高い。作曲家没後40年にあたる近年の2022年には過去の録音の多くが蘇った。よりリズムの切れ味が鋭く、ダイナミックでエキサイティングな演奏、よりスタイリッシュな演奏は他にもあったが、オーケストラをドライブしすぎることなく、どこからともなく響く不気味な低音、単調なリズムなど人為的な洗練とは異なる泥臭さが、原始的で野卑な作品本来の姿をこの上なく描き出している。ソリストに最強の布陣を敷き、現代的感覚で描かれた当録音は、今や同曲の「新定盤」であろう。
文:大津 聡
(ぶらあぼ2025年2月号より)

【information】
CD『オルフ:カルミナ・ブラーナ/パーヴォ・ヤルヴィ&チューリヒ・トーンハレ管』

オルフ:カルミナ・ブラーナ
パーヴォ・ヤルヴィ(指揮)
チューリヒ・トーンハレ管弦楽団

アリーナ・ヴンダーリン(ソプラノ) マックス・エマヌエル・ツェンチッチ(カウンターテナー) ラッセル・ブラウン(バリトン)
チューリヒ・ジングアカデミー チューリヒ少年合唱団

Alpha/ナクソス・ジャパン
NYCX-10506 ¥3520(税込)