中世の放浪楽師たちの歌の写本をテキストにした「カルミナ・ブラーナ」は、時代を超えた人間賛歌である。自然の賛美に始まり、酒の歓び、肉の歓びをストレートに表現した言葉に、オルフはシンプルだが力強い音楽を付けた。だから、あまり澄ました演奏ではつまらない。本盤ではテノールをカウンターテナーに歌わせるなど(第12曲)、遊び心が随所で顔を出す。バッティストーニは豪華独唱陣、鉄壁な合唱を巧みに制御しながら、活き活きと造形。勢いがあって熱気を帯びながらも、どこをとってもフレッシュな響きになっているあたりに、この人らしいサウンドに対する並外れたセンスを感じる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年12月号より)
【information】
CD『オルフ:カルミナ・ブラーナ/アンドレア・バッティストーニ&東京フィル』
オルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」
アンドレア・バッティストーニ(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団
ヴィットリアーナ・デ・アミーチス(ソプラノ)
彌勒忠史(カウンターテナー)
ミケーレ・パッティ(バリトン)
新国立劇場合唱団
世田谷ジュニア合唱団
収録:2024年3月、サントリーホール(ライブ)
日本コロムビア
COCQ-85626 ¥3500(税込)