シルヴァン・カンブルラン(指揮) 読売日本交響楽団

熟成のコンビが放つチャイコフスキー傑作選


 2010年に始まったカンブルランの読響常任指揮者としての仕事も、残すところあと半期。今後も桂冠指揮者として共演は続くとしても、一つの区切りがつく。9月はチャイコフスキー・プロ。カンブルランと読響はこれまでにも均整の取れた作品像を披露しており、協業の精髄が現れる演目だ。
 まずはシェイクスピアに基づく幻想序曲「テンペスト」。重苦しい雰囲気が嵐に始まる骨太の物語を予感させ、中間部では夢幻的でメランコリックな世界が現れる。チャイコフスキーの音のドラマを、カンブルランがオペラ仕込みの解析力で描き出してくれるだろう。
 続いてチェロと管弦楽が協奏する「ロココ風の主題による変奏曲」。主題はチャイコフスキー自身の純然たる創作で、擬古典的な旋律が優美に歌い出された後、多彩に変奏される。独奏のアンドレイ・イオニーツァは15年チャイコフスキー国際コンクールの覇者で、世界の名門オーケストラとの共演が続いている。「ロココ風」は同コンクールの課題曲だから、まさに名刺代わりの一曲といえよう。カンブルランとは昨年9月にハンブルクでフランス現代曲を演奏しており準備万端だ。
 「交響曲第4番」はあらゆるオケがレパートリーとしている名曲だから、名手の揃った読響の魅力が余すところなく味わえよう。運命のファンファーレから強力なブラスセクションが大活躍。第2楽章では木管が精妙なアンサンブルを織り、第3楽章は軽快なピッチカートが祭りのように華やかな行進曲を挟む。フィナーレでカンブルラン&読響がスコアをどう構成し立体化するかというあたりは、とりわけ見どころとなろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2018年9月号より)

第210回 土曜マチネーシリーズ 2018.9/15(土)14:00
第210回 日曜マチネーシリーズ 2018.9/16(日)14:00
東京芸術劇場 コンサートホール
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