初秋に贈る喜劇オペラの愉悦と快活なるシンフォニー
東京シティ・フィルは、2015年4月に高関健が第4代常任指揮者に就任以来、近現代作品やオペラを積極的に取り上げている。第318回定期演奏会は、フランスの作曲家ラヴェルが書いた歌劇《スペインの時》を演奏会形式で上演する。
18世紀のスペイン・トレドを舞台にしたおよそ50分ほどの全1幕の作品。登場人物は、真面目な時計屋トルケマダ、その妻で夫の留守中に逢引をしようとするコンセプシオン、愛の歌を披露して浮かれる若い恋人ゴンサルヴェ、コンセプシオンに言い寄る銀行家ドン・イニーゴ・ゴメス、そして騒動に巻き込まれるロバ曳きのラミーロの5人。男たちはコンセプシオンをめぐってあたふた。2人の男は鉢合わせしないようにそれぞれ時計に隠れるが、彼女の目にとまったのは、たまたま居合わせ、時計を黙々と運ぶラミーロ。そこに店主が戻ってきて…。トルケマダに村上公太、コンセプシオンに半田美和子、ゴンサルヴェに樋口達哉、ラミーロに桝貴志、ドン・イニーゴ・ゴメスに北川辰彦と、舞台経験豊富な歌手たちが配役され、最終場では5人がハバネラのリズムにのせて、物語の滑稽さを歌い上げる。ラヴェルのスペインへの憧れをのせた、ユーモア溢れる音楽喜劇だ。
前半は、モーツァルト「交響曲第39番」。オペラ・ブッファを得意としたモーツァルトの交響曲で始まるのも高関のこだわりだろう。若手の楽団員が増え、アンサンブルに磨きがかかってきたシティ・フィル。彼らの溌剌とした演奏が楽しみだ。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2018年9月号より)
第318回定期演奏会
2018.9/15(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
http://www.cityphil.jp/