トン・コープマン・プロジェクト 2018

名匠が2つのオーケストラと分け入るバッハ傑作の森

トン・コープマン
C)Foppe Schut

 卓越した指揮者・歴史的鍵盤楽器奏者として、古楽界を牽引してきたオランダの名匠、トン・コープマン。すみだトリフォニーホールで開く「トン・コープマン・プロジェクト 2018」では、手兵アムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団との大作「ミサ曲ロ短調」、新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮しての管弦楽作品と、大バッハの傑作の森に挑む。
 4年前、ライプツィヒ・バッハ音楽祭の閉幕コンサートでの「ミサ曲ロ短調」演奏を前に、次のように語っていたコープマン。「この曲はバッハが遺した数多くの作品の中でも、最高峰に位置づけられます。キャリアの初期から最晩年まで、彼自身の音楽の集大成としただけでなく、古い教会音楽の様式をも集約して抽出し、化学反応を起こした上で、途方もなく、素晴らしい音楽を創り上げたからです」。そして、声楽と管弦楽が絶妙に調和した、名演を聴かせてくれた。今回は、テノールのティルマン・リヒディやバスのクラウス・メルテンスら、この時と同じソリスト陣に加え、気鋭のソプラノ、マルタ・ボスを起用。さらに練り込まれ、円熟度を増した“超演”が期待できる。
 また、これに先立ち、新日本フィルを指揮し、管弦楽組曲第3番・第4番とブランデンブルク協奏曲第1番・第3番に対峙。モダン楽器オーケストラとの共演について、「“どう弾くか”を単にレクチャーするのではなく、共に音楽を創るのが私の目的。共に考え、コラボレートするのは楽しく、有意義な体験です」と話していた名匠だけに、新たなバッハ演奏の地平を拓く快演に触れられそう。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2018年9月号より)

コープマン&新日本フィルハーモニー交響楽団 2018.9/6(木)19:00
コープマン&アムステルダム・バロック管弦楽団&合唱団 2018.9/8(土)17:00
すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 
http://www.triphony.com/