自分が本当に言いたいこと、それが交響曲になるのです
70歳を迎えてのんびり余生を過ごす。そんな世間一般のイメージと、多忙を極めている作曲家池辺晋一郎の姿はまるで異なっている。デビュー以来、つねに創作界の最前線で活動し続け、作品数も膨大だ。今年の9月15日、池辺が古稀の誕生日を迎えるにあたり、創作活動の軌跡を祝うバースデーコンサートが、東京オペラシティコンサートホールで開催される。この日のメインは世界初演となる交響曲第9番。交響曲第8番が今年の3月2日に初演されたばかりの池辺だが、交響曲は創作の中でも特別な存在だという。
「21世紀に交響曲を書く意味については様々な考え方がありますが、僕にとって交響曲はとても重要なジャンルなのです。管弦楽作品の作曲依頼では、用途や長さなどに条件があり、目的がはっきりしているので自由に書くわけにはいかない場合が多い。ですから、純粋に自分の中で温めていたもの、個人的なモチベーションがはっきりしているものの発露として、交響曲を書くことになります。これまで書いてきた交響曲のうち第1番以外は、いわゆる“交響曲的”な作品ではないかもしれません。交響曲というのは自らの個人的表現である場合につけたいタイトルですね」