ウィーン古典派2大巨匠への興味が深まる好企画
東京交響楽団の東京オペラシティシリーズが10月で第100回を迎えるが、このシリーズは選曲がひとひねり利いている。意表を突くコンビネーションでも、聴いてみるとなるほど、とオチがつくのが愉しい。記念回を振るのは音楽監督のジョナサン・ノット。今一番熱いコンビのひとつだ。
今回はハイドンとモーツァルト。ハイドンの交響曲第86番はパリの新設オーケストラのために書き下ろされた、いわゆる「パリ交響曲」中の1曲だ。このシリーズには「めんどり」とか「熊」とか、ユニークなタイトルを持つ曲が多いが、86番はとりわけ規模が大きく洗練されており、すっきりと耳に入ってくる。後半はモーツァルトの交響曲第39番。後期三大交響曲の幕開けを告げる荘重な和音で始まり、優美で力強い主部へと進む堂々とした交響曲だ。
間に挟まれるのはハイドンのチェロ協奏曲第1番で、ソロはイェンス=ペーター・マインツ。難関ミュンヘン国際コンクールに優勝した後、1995年よりベルリン・ドイツ響の首席を9年間務めた。ドイツを代表する中堅チェリストで、東響とは2013年にプロコフィエフで共演済み。好評を受けての再登場となる。
さてこのプログラム、曲の相性がいいのは勿論だが、86番(1786年)と39番(1788年)はほぼ同時代の曲で、チェロ協奏曲はハイドン30代前半の、そして39番はモーツァルト32歳の作。つまり交響曲で二人が同じ時期にどこまで到達していたのか、そして同じくらいの年齢でどういう曲を書いていたのかが比較可能なのだ。スタンダードなプロでもきっちり筋を通しているところが、知性派ノットらしいではないか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2017年9月号より)
第100回 東京オペラシティシリーズ
2017.10/15(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/