音楽堂ヴィルトゥオーゾ・シリーズ 21 ハーゲン・クァルテット

世界最高峰のアンサンブルの現在を聴く

C)Harald Hoffmann
 現代を代表するクァルテットのひとつ、ハーゲン・クァルテットが神奈川県立音楽堂に登場する。ハーゲン・クァルテットは1981年にハーゲン家の4人の兄弟姉妹によって結成された。その後第2ヴァイオリンの交替を経ながらも、一貫して最高水準の団体として意欲的な活動を展開し、今や円熟の境地にあるといってよいだろう。
 プログラムも魅力的だ。ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第3番、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番、シューベルトの弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」という3曲が並ぶ。ショスタコーヴィチ作品のなかでも、ひときわ歪んだユーモア、アイロニーを含んだ第3番に、ベートーヴェンが最後に書いた内省的な第16番が続き、最後は暗い情熱を湛えたシューベルトの「死と乙女」で終わる。プログラム全体に通底するのは悲劇性と自問自答するような内観とでもいえるだろうか。ベートーヴェンが弦楽四重奏曲第16番の自筆譜に書き込んだ「かくあらねばならぬか?」「かくあるべし」という有名な言葉が、そのままプログラム全体を表すキーワードになっているようにも思える。
 ハーゲン・クァルテットは4人すべてがストラディヴァリウスを使用するクァルテットでもある。2013年半ばより、「パガニーニ・クァルテット」と呼ばれる4挺セットの名器を日本音楽財団より貸与されている。名器の音色をたっぷり聴けるという点でも興味深い。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2017年7月号から)

7/2(日)14:00 神奈川県立音楽堂
問:チケットかながわ0570-015-415 
http://www.kanagawa-ongakudo.com/
※ハーゲン・クァルテットの全国公演については、下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.japanarts.co.jp/