市原 愛(ソプラノ)

地元横浜でのガラコンサート初出演に意欲満々

 近年、国内外で着実にキャリアを積み重ね、ファンを増やしてきた人気ソプラノ市原愛。現在公開中の邦画『追憶』では、千住明が手掛けたテーマ音楽で美しいヴォカリーズを聴かせて、大きな話題を呼んでいる。
「千住さんのこだわりで、同じように美しい旋律だけれどオープニングとエンディングでニュアンスが微妙に違う。日本映画界が誇る黄金コンビ(監督・降旗康男&撮影・木村大作)に見守られながらのレコーディングは緊張しましたが、素晴らしい体験ができました」
 そんな彼女がこの夏、地元横浜の神奈川県民ホールが主催する『ファンタスティック・ガラコンサート 2017 in summer』に初登場。年末恒例の人気企画だが、同ホールの改修工事に伴い今回は特別に7月の開催。神奈川フィルの演奏によるJ.ウィリアムズ「オリンピック・ファンファーレとテーマ」やドビュッシー交響詩「海」など夏にちなんだ管弦楽曲をはじめ、ヴァイオリンの石田泰尚やピアノの外山啓介ら人気奏者が集まる華やかなプログラムに加わる。
「小学生の頃、中村紘子さんのリサイタルでアンコールのときに花束をお渡しした素敵な想い出もある、私にとっては特別なホールです。もちろん初めていらした方にとってもこの立地は最高! 山下公園や横浜港に面し、中華街も近いですし楽しめるエリアがたくさんあります」
 前半では「ワルツ王」J.シュトラウスⅡが残した傑作オペレッタ《こうもり》からのアリアを披露。夜会に女優と偽って出席した小間使いのアデーレが、主人のアイゼンシュタインと鉢合わせして正体を見破られそうになり「まさか、ご冗談でしょ?」と一笑に付す楽しい場面だ。
「コケティッシュなアデーレは大好きな役です。このアリアも高い音と声を転がすテクニックが必要な難曲ですが、何度歌っても楽しい」
 後半にはモーツァルト《コジ・ファン・トゥッテ》のクライマックスを飾るテノールとの二重唱を。相手役を務めるのは前半に《セビリアの理髪師》のアリアを披露する錦織健。シュトラウスとモーツァルト、いずれも明るく、華やかなキャラクターの市原にふさわしいナンバーだ。
「2015年に錦織さんプロデュースの《後宮からの逃走》でブロンデ役を歌ったのもまさにここ。今回は二人で面白い趣向も考えていますのでどうかお楽しみに」
 ガラコンサートではすっかりお馴染みとなった松尾葉子の指揮と、宮本益光(バリトン)の名司会者ぶりにも期待したい。
「マエストロとは初顔合わせですが、こんなに幅広いプログラムをお一人で振られるなんて本当に凄いですね! 当日はトークコーナーも用意されているとのことですので、宮本さんとは入念な打ち合わせが必要ですね(笑)」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ 2017年7月号から)

ファンタスティック・ガラコンサート 2017 in summer
7/2(日)15:00 神奈川県民ホール
問:チケットかながわ0570-015-415
http://www.kanagawa-kenminhall.com/