世紀を超えた3名曲の繋がりが明らかに
水戸室内管弦楽団の10月定期では、ナタリー・シュトゥッツマンがタクトを取る。コントラルト歌手として著名なシュトゥッツマンだが、近年は指揮者としてもなじみの顔になってきた。もともと指揮への関心は高く、歌手の地位を確立した後に積年の夢の実現に乗り出したのだが、道を開いてくれたのが小澤征爾。自らアドバイスをするだけでなく、サロネンやラトルらを指導したことで知られるフィンランドの名指揮者ヨルマ・パヌラを紹介した。その後、彼女はオルフェオ55という室内楽団を創立、順調にキャリアを重ね、現在は歌手・指揮者両面で活躍している。
90年代から歌手として3回、指揮者として1回登場しているシュトゥッツマンは、水戸室内管にとってもゆかりのアーティスト。実は彼女が舞台で初めて指揮したのも同団(2008年定期)で、その時の経験がきっかけとなって指揮者の道に飛び込んでいったという。最強メンバーからなる精鋭部隊でもあるこの楽団が、再度彼女を指揮者として呼び寄せたのだがら、その才能は確かなものだ。
声楽出身だけあって、旋律をしっかりと歌わせ、バランスの取れたドライブを見せる。古楽から近代まで、オーケストラの大曲からオペラまで、レパートリーは幅広い。今回のプログラムは18世紀から20世紀までそれぞれの世紀の交響曲というコンセプトで構成されているが、モーツァルトの交響曲第25番、プロコフィエフの古典交響曲、そしてビゼーの交響曲 ハ長調とメロディアスな曲が並んでいるのもうなずけよう。水戸芸術館の700席の贅沢なATMホールで綺麗に響く選曲でもある。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2016年11月号から)
10/29(土)18:30、10/30(日)14:00 水戸芸術館コンサートホールATM
問:水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000
http://www.arttowermito.or.jp