ユーリ・バシュメット(指揮/ヴィオラ) 水戸室内管弦楽団

名奏者との理想的な共演が実現


 6月の水戸室内管弦楽団定期にユーリ・バシュメットが客演する。バシュメットはヴィオラがソロ楽器としてまだ認知されていない時代から道を切り開いてきた、ソ連〜ロシアを代表するヴィオラ奏者。リヒテルやロストロポーヴィチ、クレーメルといった名だたる演奏家と共演してきただけでなく、モスクワ・ソロイスツ合奏団を自ら設立し、指揮者としても長年の実績を持つ。ソリスト級の精鋭からなる水戸室内管は、通常協奏曲では団員が独奏者となるが、指揮者としてもソリストとしても経験豊富なバシュメットは理想的で、まるでメンバーとなったかのように、互いの長所を引き出しあう共演になるのではないか。
 プログラムははじめにハイドン、最後にシューベルトのシンフォニーをバランスよく配置。ハイドンの交響曲第83番の「めんどり」という俗称は第1楽章第2主題に由来するが、作曲者本人が付けたものではなく、曲はいたって真面目。熟練の技法に彩られた充実した音楽だ。シューベルトの第5番には室内楽的な軽やかさと爽やかさがある。いずれも水戸室内管、水戸芸術館のコンサートホールにぴったりの規模・編成の曲だ。
 その間にはバシュメットが2曲の協奏的作品、ブルッフ「コル・ニドライ」、パガニーニ「ヴィオラ協奏曲」を聴かせる。原曲はいずれも別の楽器・編成(ブルッフ:チェロ/パガニーニ:ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ギターの四重奏曲)のためのものだが、バシュメットのテクニックとインスピレーションが、水戸室内管の名手たちとのコラボを通じて、原曲の世界をどう広げていくかを楽しみたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)

第96回 定期演奏会
6/4(土)18:30、6/5(日)14:00 水戸芸術館コンサートホールATM
問:水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000
http://www11.arttowermito.or.jp