独創的な演出で生まれ変わるイヨネスコの傑作

今回上演する『犀』は、サミュエル・ベケットと並ぶ不条理演劇の旗手ウジェーヌ・イヨネスコの戯曲。人間が次々と“犀”に変身、遂には街中が“犀”に埋め尽くされてゆく――。第二次世界大戦前のファシストの台頭に刺激を受けて書かれ、一世を風靡した作品ながら、その後フランスでもあまり取り上げられなかったそうだが、モタは戯曲の“音”と“身体性”に着目、“言葉”とも添わせることで、ダンス作品にも通じる洗練された動きの舞台を創り出した。また、具体的に姿を現す演出が多い“犀”を敢えて舞台に登場させないことで、例えばウイルスの蔓延といった“目に見えない恐怖”をも描き、作品に現代的な意味合いを吹き込むことに成功している。「イヨネスコは現代的な側面をもった作家。世界の観客の前で上演してきたことで、文化圏によって異なる笑いなどについても学び、取り入れることができた」とモタ。見逃せない舞台がいよいよ日本上陸する。
文:藤本真由
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)
11/21(土)〜11/23(月・祝) 彩の国さいたま芸術劇場
問:F/Tチケットセンター03-5961-5209
http://www.festival-tokyo.jp
彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939
http://www.saf.or.jp