【CD】新実徳英 打楽器作品の真髄/上野信一

「風神・雷神」では大太鼓の圧倒的な打撃にオルガンの巨大な音響が対峙、ダイナミックなエネルギーの動きが聴かれる。そこに接続する「素数は踊る」ではより繊細で精緻なリズムの運動へと転じ、二作を通じて長大な祝祭空間が立ち現れる。「荒地」は一転してT.S.エリオットの詩から得たインスピレーションを自在な音の戯れへと変換。遊び心に富み、断片的な語句や「怒りの日」の旋律、ジャズ風の身振りなどが次々と飛び出す。全編を貫くのは上野の新実作品への絶対的な信頼と、その魅力を自らの表現として伝えようとする意志だ。作曲家と演奏家の深い共鳴により成立した一枚と言える。

文:江藤光紀

(ぶらあぼ2026年11月号より)

【information】
CD『新実徳英 打楽器作品の真髄/上野信一』

新実徳英:風神・雷神、素数は踊る、荒地I-V

上野信一(打楽器)
大平健介(オルガン)
中川俊郎(ピアノ)

コジマ録音
ALM-7329 ¥3300(税込)