日本指揮界の最長老コバケンと、彼が桂冠名誉指揮者の任にある日本フィルによる昨年6月のライブ録音。えらく熱い演奏が想像されるが、ディスクを聴いて気付かされるのはむしろ、(中でもとりわけゆっくりと運ばれる遅い部分における)こまやかさや丁寧な造作だ。もちろん高揚感はあるのだが、第1楽章前半からあらゆるフレーズが息づきながらじっくりと運ばれ、第3楽章中間部の動きや第4楽章緩徐部分の鳥の声等も印象的。同曲の隠れがちな部分の魅力を実感させられる。日本フィルも最高度のパフォーマンスを展開。これは当コンビの現段階の到達点を示す好演だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2026年11月号より)
【information】
CD『マーラー:交響曲第1番「巨人」/小林研一郎&日本フィル』
マーラー:交響曲第1番「巨人」
小林研一郎(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
収録:2025年6月、横浜みなとみらいホール(ライブ)
マイスター・ミュージック
MM-4558 ¥3520(税込)

柴田克彦 Katsuhiko Shibata
福岡県生まれ。音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。雑誌、コンサート・プログラム、Web、宣伝媒体、CDブックレットへの、取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)、 『1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集』(音楽之友社)。


