伝統楽器を用いたカーチュン・ウォン編曲の「展覧会の絵」が、日本フィルにより本邦初演!

左:カーチュン・ウォン ©Ayane Sato
右:務川慧悟 ©Yuji Ueno

 コロナ禍で演奏活動が止まった時期、カーチュン・ウォンはその空白を単なる沈黙とはしなかった。指揮台から離れた間、彼は自らの文化的ルーツを見つめ直す機会とし、中国系の伝統楽器について学び、それらの響きを西洋オーケストラの語法と結びつける作業に取り組んだ。その成果のひとつが、ムソルグスキーの「展覧会の絵」の新たな編曲である。

 ピアノ独奏曲として生まれ、ラヴェル編曲により管弦楽曲として広く親しまれてきた「展覧会の絵」。カーチュン版では、笛子、揚琴、胡琴、琵琶、打楽器と管弦楽が、いわば「協奏交響曲」のように響き合うことで、ムソルグスキーの絵画的想像力は、東西の響きが交差する新たな展示空間へと姿を変える。充実期を迎えたカーチュン・ウォンと日本フィルが、どのような響きを創出するか。

 前半に置かれるのは、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。ソリストは務川慧悟。バロックから現代、さらにフォルテピアノまで視野に収め、レパートリーの幅と確かな様式感で注目される若き名手が、王道中の王道であるこの協奏曲にどう向き合うのか。幅広い経験を積み重ねてきた務川だからこそ、名曲に潜む新たな表情を引き出してくれるに違いない。鮮烈な冒頭から、華麗さの奥にある歌心まで、彼の現在地を知る格好の機会となるだろう。

 カーチュン・ウォンと日本フィルによる、「既知の曲」としてではなく、「いま初めて出会う音楽」として聴く名曲コンサート。発見の喜びはすぐそこだ。

文:平岡拓也

(ぶらあぼ2026年8月号より)

カーチュン・ウォン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団 第414回 名曲コンサート
2026.10/24(土)14:00 サントリーホール
問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp


平岡拓也 Takuya Hiraoka

音楽ジャーナリスト。1996年生まれ。慶應義塾大学文学部でドイツ語圏の文学・音楽を学ぶ。『音楽の友』『MOSTLY CLASSIC』などの音楽誌、複数のWEBメディア、在京オーケストラのプログラムにコンサート評やインタビュー、プログラムノートを執筆。海外アーティストへのインタビューも多数手がけ、近年はアジア圏のオーケストラを中心に、地域の文化的・歴史的背景も視野に入れた取材・執筆を継続している。