石上真由子が、“最高のパートナー”江崎萌子と紡ぐ「究極のアンサンブル」

©Masatoshi Yamashiro

 独創的な感性で魅せるヴァイオリニスト・石上真由子が、ライプツィヒ音楽大学で教鞭をとるピアニスト・江崎萌子と共に、Hakuju Hallのリクライニング・コンサートに登場する。

 今回の内容には「大きく2つの柱がある」という。

 「1つはフランスの作曲家、中でもプーランクが柱です。それには憧れのヴァイオリニスト、ジネット・ヌヴーの存在が影響しています(彼女は「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」を委嘱し、作曲者プーランクのピアノで初演した)。またヌヴーのかっこいい録音を若い頃擦り切れるぐらい聴いたので、ファリャの『スペイン舞曲』を合わせました。

 もう1つの柱は時間の経過。特に昼過ぎから夕暮れの薄暗くなっていく時間帯です。ドビュッシーの『美しき夕暮れ』『月の光』は明快ですが、エネスクの『協奏的即興曲』も夕暮れの景色が浮かぶような曲。プーランクのソナタも、第2楽章は夕暮れ近い時間に雨がしとしと降っている景色、第3楽章はフランスの田舎に突如現れる遊園地の小さなメリーゴーランドが夜の景色の中でキラキラと光っている様子が思い浮かびます」

 中でもプーランクのソナタへの思いは強い。

 「14〜15歳頃に出会い、当初何度も弾いたのですが、長らく演奏しておらず、気持ちを新たに取り組みたいと考えました。またヴァイオリン嫌いのプーランクが、ヌヴーの委嘱ということで、協力を得ながら書いたといった背景もあります。曲は銃殺された友人ガルシア・ロルカの思い出に捧げた作品で、戦争への怒りや世の中へのシニカルな視線もありながら、幸福期の回顧や作曲者のパリジャンらしいダンディーな側面も見えるなど、色々な要素が詰まっているところが大好き。今回はヌヴーがどう弾いたかを想像しながら演奏したいと思います」

 「デュオM&M」として共に活動する江崎萌子とは、互いに「最高のパートナー」と認め合う間柄だ。

 「初共演時のリハーサル中にお互いピンと来て、2020年11月広島でのコンサートの際に声をかけて以来、固定のデュオとして積み重ねてきました。演目もドイツの古典派やロマン派が多かったのですが、今回は久々に、パリへ留学した江崎さんも得意ではないかと考えたフランスものに取り組みます。彼女は繊細なニュアンスを追求しますし、文章を読むのが好きで言語に対するセンスが音楽にも表れています」

 最後に聴衆へのメッセージを。

 「ドイツ系のプログラムで私たちのファンになられた方も楽しみにお越しいただきたいですし、デュオという究極のアンサンブルの妙味を感じてほしい。それに1時間の公演でトークも挟みますので、皆さん気軽に来ていただけたら嬉しいです」

 ここはリクライニング・コンサートの没入感の中で、洗練された音楽に身を浸したい。

取材・文:柴田克彦

(ぶらあぼ2026年10月号より)

リクライニング・コンサート 第190回 石上真由子(ヴァイオリン) & 江崎萌子(ピアノ)
2026.10/2(金)15:00 19:30 Hakuju Hall
問 Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700
https://hakujuhall.jp


柴田克彦 Katsuhiko Shibata

福岡県生まれ。音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。雑誌、コンサート・プログラム、Web、宣伝媒体、CDブックレットへの、取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)、 『1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集』(音楽之友社)。