N響100年の楽団史に深く刻まれたベートーヴェン――5人の指揮者が9曲の交響曲をつなぐ

左上より:ファビオ・ルイージ ©NHKSO/クリストフ・エッシェンバッハ ©Luca Piva/トゥガン・ソヒエフ ©Marco Borggreve/シャルル・デュトワ ©Chris Lee/マレク・ヤノフスキ ©Felix Broede

 2026年10月、N響は創立100年を迎える。そして、翌2027年はベートーヴェンの没後200年。となれば、2026/27シーズンはN響にとって特別なベートーヴェン・イヤーになる。N響には創立当初より、楽団とゆかりの深い名指揮者たちがベートーヴェンの交響曲を指揮してきた伝統がある。N響の前身である新交響楽団は、1926年10月22日の第1回研究発表演奏会で、近衛秀麿指揮により交響曲第4番を演奏した。その翌年のベートーヴェン没後100年にはヨーゼフ・ケーニヒが「第九」を含む7曲の交響曲を指揮。1970年の生誕200年ではヴォルフガング・サヴァリッシュが、交響曲全曲を指揮している。

 そして、今回のN響100年特別企画では、全5回にわたって、現在のN響に欠かすことのできない5人の指揮者たちが9曲の交響曲をとりあげる。

 第1回はさっそくこの9月に開かれる。首席指揮者のファビオ・ルイージが振るのは交響曲第1番と第3番「英雄」。記念すべき第1作と、交響曲の歴史を変えた金字塔である「英雄」の組み合せは、シリーズの幕開けにふさわしい。知性と情熱を兼ね備えたルイージならではのベートーヴェン像が築きあげられることだろう。

 第2回は10月のクリストフ・エッシェンバッハ。交響曲第8番、第5番「運命」他からなるプログラムが組まれた。巨匠の域に入り、しばしば巨大な音楽を作りあげるエッシェンバッハだが、はたしてベートーヴェンはいかに。

 第3回は11月のトゥガン・ソヒエフ。第2番と第6番「田園」という組み合せが興味深い。明るく晴れやかな曲想に、深いドラマが刻印された2曲と言えるだろうか。ソヒエフのベートーヴェンは重厚だ。

 第4回は12月の名誉音楽監督シャルル・デュトワ。交響曲第4番と第7番が演奏される。この2曲はよくセットで演奏されるが、いずれの曲もリズムの妙が際立っている。極限まで磨き抜かれたアンサンブルを期待したい。

 そして第5回は12月のマレク・ヤノフスキによる「第九」だ。ヤノフスキは2026年をもって指揮活動から引退することを表明しており、今回の「第九」が最後の公演となる。いつもヤノフスキが指揮台に立つと、オーケストラからひりひりするような緊張感に満ちたサウンドが出てくる。最後の共演となったら、いったいどんなことになるのか。東京オペラシンガーズと実力者ぞろいの独唱陣(森谷真理、杉山由紀、村上公太、トマシュ・コニエチュニー)とともに、記念の年の掉尾を飾る。

文:飯尾洋一

(ぶらあぼ2026年10月号より)

第2071回 定期公演 Cプログラム ― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏1 ―(第1番&第3番)
2026.9/25(金)19:00、9/26(土)14:00 NHKホール
第2073回 定期公演 Cプログラム ― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏2―(第8番&第5番)
10/23(金)19:00、10/24(土)14:00 NHKホール
第2075回 定期公演 Cプログラム ― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏3 ―(第2番&第6番)
11/13(金)19:00、 11/14(土)14:00 NHKホール
第2078回 定期公演 Cプログラム ― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏4 ―(第4番&第7番)
12/4(金)19:00、12/5(土)14:00 NHKホール
ベートーヴェン 「第9」演奏会 ― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏5 ―
12/17(木)19:00、12/18(金)19:00、12/19(土)14:00、12/20(日)14:00、12/22(火)19:00 NHKホール
問 N響ガイド0570-02-9502

https://www.nhkso.or.jp
※公演により出演者、プログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


飯尾洋一 Yoichi Iio

音楽ジャーナリスト。著書に『クラシックBOOK この一冊で読んで聴いて10倍楽しめる!』新装版(三笠書房)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『マンガで教養 やさしいクラシック』監修(朝日新聞出版)他。音楽誌やプログラムノートに寄稿するほか、テレビ朝日「題名のない音楽会」音楽アドバイザーなど、放送の分野でも活動する。ブログ発信中 https://www.classicajapan.com/wn/