ティーレマン&ベルリン国立歌劇場管が11月に来日――「アルペン」&「ロマンティック」でしめす、黄金コンビの真骨頂

左より:クリスティアン・ティーレマン ©Matthias Creutziger/カミラ・ニールンド ©Shirley Suarez Photography/ルドルフ・ブッフビンダー ©Marco Borggreve

 2022年、来日が叶わなくなったダニエル・バレンボイムに代わり、急遽シュターツカペレ・ベルリン(SKB)を率いて日本公演に臨んだのがクリスティアン・ティーレマンだった。ブラームスとブルックナーの交響曲ほかで名演を披露して同コンビの新時代を予感させたが、果たして、24年に正式に音楽総監督に就任。その重要なきっかけとなった来日公演から4年、ティーレマンが今度は堂々のカペルマイスターとして、450年以上の伝統を誇る名門楽団を再び率いて日本ツアーを実現する。

 プログラムはA・Bの2つ。プログラムA(11/17, 11/18)のメイン曲目は、当初R.シュトラウス「英雄の生涯」だったが、ティーレマン自身の強い希望で同作曲家の「アルプス交響曲」に変更された。夜明けから日没まで登山の様子を描きながら、人間の深い精神にまで通じる内容をもつ「アルプス交響曲」をこの時節に演奏することは、ティーレマンの芸術観も映し出されていよう。また、「英雄の生涯」は近年多くの来日楽団がこぞって演奏する定番曲となっているが、「アルプス交響曲」はコロナ禍後の来日楽団としては最大級の編成による大曲で、その象徴的な意義も大きい。運営面の負担も増すはずで変更決定は容易ではなかったと推察するが、このコンビによる「アルペン」は決定的名演が大いに期待できる。変更に驚いたファンも多いかもしれないが、彼らの実力と魅力がより示される変更として歓迎したい。

 Aプロ前半は同じくR.シュトラウスの「四つの最後の歌」で、現代を代表するシュトラウス歌手であるカミラ・ニールンドが歌う。《ばらの騎士》元帥夫人や歌曲などの歌唱で絶賛の続く、いま円熟の極みにあるニールンドが、盤石のシュトラウス演奏を期待できるティーレマン&SKBとともに、作曲家晩年の絶美の歌曲集を歌う。これぞ必聴というべき、理想的なプログラムである。

 もう一つの演目であるプログラムB(11/19)は、オーストリアの名匠ルドルフ・ブッフビンダーを迎えたモーツァルトのピアノ協奏曲第21番と、ティーレマンの真骨頂ともいえるブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」。こちらはオーストリアの大作曲家二人による名作の組み合わせ。同国のピアノの達人が奏でるモーツァルトは常に大きな聴きものだし、ブルックナーの壮大な世界を味わうのにこのコンビ以上の存在もなかなかないだろう。同国の古典派と後期ロマン派の対照性を、匠たちによる名演で味わえるのも興味を増すポイント。こちらも語り草となるような名演への期待がふくらむプログラムだ。

 重みのある響き、音色の深みといった、いわゆる「ドイツらしさ」を色濃く残すシュターツカペレ・ベルリン。ドイツの伝統を独自の存在感で体現するティーレマンとの出会いは、むしろ必然だったのかもしれない。それを証明するには最高の独墺プログラムで、ティーレマンとSKBの本領が発揮されるに違いない。 

文:林 昌英

(ぶらあぼ2026年9月号より)

クリスティアン・ティーレマン(指揮) ベルリン国立歌劇場管弦楽団《シュターツカペレ・ベルリン》
2026.11/17(火)、11/18(水) 各日19:00 サントリーホール【A】
11/19(木) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール【B】
問 テンポプリモ03-3524-1221
https://tempoprimo.co.jp

他公演
11/15(日) ミューザ川崎シンフォニーホール【B】(044-520-0200)
※公演により出演者、プログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


林 昌英 Masahide Hayashi

出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。