
現在、海外のオーケストラでは多くの日本人奏者が重要ポストで活躍しているが、その筆頭が青木尚佳だろう。かつて巨匠チェリビダッケが首席指揮者を長年務めた名門オーケストラ、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団に、2021年、楽団初の女性コンサートマスターとして就任。今年5月のミュンヘン・フィル日本公演では、次期首席指揮者ラハフ・シャニのもと、緻密な音楽を創り上げ、オーケストラをしなやかに統率する姿を見せてくれた。
そんな彼女はオーケストラだけでなく室内楽でも積極的に活動している。メンバーは、青木の同僚であるミュンヘン・フィル第1首席ヴィオラ奏者ジャノ・リスボアと、バイエルン放送響の元首席チェロ奏者で現在はミュンヘン音楽大学教授のウェン=シン・ヤン。ドイツ国内での活動名が“ミュンヘン弦楽トリオ”であることからもわかるとおり、ミュンヘンの音楽家たちのアンサンブルで、この秋、3年ぶりの日本公演を行う。
今回のプログラムは、20代の若きベートーヴェンの才気がほとばしる弦楽三重奏曲 op.9-2。御年100歳、今なお現役の作曲家ジョルジュ・クルターグのライフワークともいえるミニアチュール作品集「Signs, Games and Messages」から抜粋。そして、鍵盤作品の傑作、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」をシトコヴェツキー編曲による弦楽三重奏版で。古典、現代、バロック、3つの全く異なる時代とスタイルの作品をどのように描き出してくれるか、ミュンヘン流の“音の会話”が楽しみだ。
文:榊原律子
(ぶらあぼ2026年8月号より)
青木尚佳(ヴァイオリン) & ジャノ・リスボア(ヴィオラ)& ウェン=シン・ヤン(チェロ)
2026.10/6(火)19:00 浜離宮朝日ホール
問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/

榊原律子 Ritsuko Sakakibara
東京生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了(音楽学)。編集プロダクション勤務を経て、2004年よりフリーランスのライター・編集者として音楽・舞台芸術のジャンルを中心に活動。各地の劇場やホールの友の会会報誌・情報誌の編集制作に長年携わる。現在はアーティストへのインタビュー、公演プログラムの編集、曲目解説の執筆などを行っている。

