昨年、小林研一郎85歳での名古屋フィルとのライブ録音。近年の変化が如実に現れ、グリンカからじっくり充実の構えで、細かい音符一つひとつが生命をもつ。チャイコフスキー4番は全体で50分近くかけて構築。勢い任せになることはなく、全てが明瞭で、歌にあふれる。噛みしめるように進む第2楽章は太く豊かなオーボエの名奏に続き、どこか懐かしい濃厚な歌い回しを堪能。フィナーレも泰然と進み、高密度で充実した響きに満たされる。ラストは全打楽器を入れた圧巻の音響で、から騒ぎではなく歓喜の音楽であると宣言するかのよう。円熟を極めつつある巨匠の貴重な記録。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2026年8月号より)
【information】
SACD『チャイコフスキー:交響曲第4番 他/小林研一郎&名古屋フィル』
グリンカ:歌劇《ルスランとリュドミラ》序曲/チャイコフスキー:交響曲第4番
小林研一郎(指揮)
名古屋フィルハーモニー交響楽団
収録:2025年10月、愛知県芸術劇場 コンサートホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00924 ¥3850(税込)

林 昌英 Masahide Hayashi
出版社勤務を経て、音楽誌制作と執筆に携わり、現在はフリーライターとして活動。「ぶらあぼ」等の音楽誌、Webメディア、コンサートプログラム等に記事を寄稿。オーケストラと室内楽(主に弦楽四重奏)を中心に執筆・取材を重ねる。40代で桐朋学園大学カレッジ・ディプロマ・コース音楽学専攻に学び、2020年修了、研究テーマはショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲。アマチュア弦楽器奏者として、ショスタコーヴィチの交響曲と弦楽四重奏曲の両全曲演奏を達成。



