トランスクリプション譜の校訂に加え、自らも優れたピアノ編曲を手掛けている活動は、福間洸太朗のピアニスト像を立体的にしている。彼の今回の新譜は、管弦楽、バレエ、オペラ、シャンソンなど、それぞれの様式美を凝縮しつつ、近代ピアニズムの華麗な表現力で彩った編曲集となっている。ワーグナー=リスト、ポンキエッリ=フレミンクスの編曲作品に加え、福間自身による深みのある《トリスタンとイゾルデ》前奏曲、音楽愛あふれる「シャンソン・メドレー」を収録。チャイコフスキー=タネーエフ「花のワルツ」の多彩な音色は圧巻である。誠実さと愛情、遊び心に満ちた傑作だ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2026年8月号より)
【information】
CD『ピアノ・トランスクリプションの世界/福間洸太朗』
ポンキエッリ(フレミンクス編、福間洸太朗校訂):歌劇《ラ・ジョコンダ》より時の踊り/ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》より第1幕 前奏曲(福間編)、イゾルデの愛の死(リスト編)/チャイコフスキー(タネーエフ編、福間校訂):バレエ音楽「くるみ割り人形」より花のワルツ/福間洸太朗:シャンソン・メドレー 他
福間洸太朗(ピアノ)
ナクソス・ジャパン
NYCC-27316 ¥2970(税込)

飯田有抄 Arisa Iida(クラシック音楽ファシリテーター)
音楽専門誌、書籍、楽譜、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジン等に執筆、市民講座講師、音楽イベントの司会等に従事する。著書に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」「クラシック音楽への招待 子どものための50のとびら」(音楽之友社)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。



